2001年05月
筑摩書房刊
(1400円+税)
2004年01月
光文社文庫化
2007/06/02
amazon.co.jp
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表題作の「青空のルーレット」は、都会のビルの窓清掃を請け負う会社で働く若者たちを描いた物語。
正しくは「高所窓硝子特殊清掃作業員」と言うのだそうです。
ビルの中で働いていると、外で音がすると思ったらゴンドラが降りていて、あぁ清掃作業かと思ったことが幾度もある筈。
機械的な作業と思ってそのまま忘れてしまうことが殆どですが、ビルの外に張り付いている作業者たちには、全く別の世界があったらしい。
日光にさらされ、窓ガラスからの照り返しもあるという厳しさの一方で、空高くある自由さ、仕事を見張っている上司なんかいない気楽さもあるという。そして、夢を見続けるには恰好の仕事、ということらしい。
そんな彼らの姿からは、爽快な風に吹かれるような気持ち良さを感じます。しかし、一旦地上に降りればアホな人間や仕事上のゴタゴタにも向かい合わなければならないのは、彼らも同じ。
それでもひとたび高い所に上がれば、彼らは再び自由となれるのでしょう。
最後、仲間のために皆が心を合わせて一斉に揃った姿は、スカッとしていて青い空以上に、とてつもなく気持ち良い。そんな気持ち良さが本作品の魅力です。
「多輝子ちゃん」は、高校に入った16歳の夏、一生の思い出となる恋をした多輝子ちゃんの物語。純真な子供の心があったからこそ、人の心を深く感じることができたのかもしれない。
大人たちが「ちょっとばかり不良になった」と思ったことも、本人の側からすれば単に恋をしたというだけのこと。そんなギャップもあるんだと教えられたことが新鮮でした。
青空のルーレット/多輝子ちゃん
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