|
|
「赤い星々は沈まない」 ★★ | |
|
表題作「赤い星々は沈まない」が、R-18文学賞大賞受賞作。 舞台は老人介護施設で、語り手は同施設に勤務している看護師のミサ。 夜勤中、コールボタンが押されたので若い同僚と二人で駆け付けると、男性入所者のベッドの中に何と全裸の新堂キヌ子。気持ちよくなって思わず押してしまったと平然と宣う。夜這いはこれで何度目か、とミサたちは頭を抱える・・・という本篇、噴飯ものというか唖然というか。 久しぶりに、これぞR-18文学賞大賞と拍手したくなる痛快作。 収録されている5篇、それぞれ全く異なるストーリーですが、各篇の登場人物が何らかの形で繋がっているところが楽しい。 ・過干渉の義母に悩まされる水織、その姑・嫁のせめぎ合いを描いた「ローズとカサブランカ」が私好み。 ・就活、婚活、終活という言葉は知っていましたが、“膣活”という言葉、「soir rouge」で初めて知りました。 ・「カラーレス」に登場するのは、イマドキの女子中学生たち。最後、ホッとさせられるところが嬉しい。 ・「肉桂のあと味」は、50歳になる今まで一度も性体験をもったことのない明日香が主人公。その明日香の弟が冒頭作に登場したミサの夫=裕也で、自分たち夫婦のセックスレスをそうした姉に相談するのですから、こりゃなんとも。 短篇ながら、明日香におけるひとつの終わりとひとつの始まりを描いていて秀逸。本短篇集を見事に締めくくっています。 赤い星々は沈まない/ローズとカサブランカ/soir rouge/カラーレス/肉桂(ニッキ)のあと味 |