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1.青空チェリー 2.日傘のお兄さん 4.檸檬のころ 6.陽の子雨の子 7.夜の朝顔 8.エバーグリーン 9.底辺女子高生 10.神田川デイズ |
ぽろぽろドール、東京・地震・たんぽぽ、リリイの籠、花が咲く頃いた君と、カウントダウンノベルズ、初恋素描帖、純情エレジー、夏が僕を抱く、リテイク・シックスティーン、やさぐれるにはまだ早い |
●「青空チェリー」● ★★☆ 女による女のためのR-18文学賞読者賞 |
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2005年08月
2004/05/30 |
スコーンと突き抜けた、爽快な発情小説、いや青春小説。というのが、表題作「青空チェリー」。 「なけないこころ」は、好きだった男の子との再会を期して、床上手となるためセックス経験を重ね中という女子学生が主人公。これまた発想が突き抜けていますが、その純情さ(?) に思わずほだされてしまう一篇。 豊島ミホさんを侮れない作家だと感じたのが、最後の「ハニィ、空が灼けているよ。」。 青空チェリー/なけないこころ/ハニィ、空が灼けているよ。 |
●「日傘のお兄さん」● ★★★ |
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2007年11月
2004/06/08 |
いいなァ、豊島ミホ。 デビュー作も良かったけれど、本書はさらに良い!の一言。 こうなるとR-18文学賞読者賞受賞という看板は、かえって邪魔なのではないか、余計な先入観を与えてしまうのではないかと危惧される。評判を呼んでいる80年代作家の中でも、群を抜く上手さをもっているのが豊島ミホではないか、と再度感じます。 本書の素晴らしさは、80年代作家だからこその狭い主人公層を相手にしているのではなく、普遍的な小説テーマを土俵にして勝負している点にあります。 「バイバイラジオスター」「すこやかなのぞみ」「あわになる」3篇は、いずれも気分の良い、良質の前菜。 バイバイラジオスター/すこやかなのぞみ/あわになる/日傘のお兄さん/猫のように |
●「ブルースノウ・ワルツ」● ★ |
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13歳の楓はお屋敷で、学校に行かず、専門の教育係やメイドに囲まれて何不自由なく暮らしている。おまけに2歳下の婚約者まで既にいる。 そんな楓の生活に変化が生じたのは、俄かに弟が出現してから。弟といっても、父親が研究のために引き取った野生児であり、山中一人で生きていたことから、言葉さえも通じない相手。 ユキと名付けられた野生児は、何に反応し、何を喜ぶのか。ユキと同じ館で暮らすうち、やがて楓の胸中に大人になることへの不安、抵抗感が芽生えるというストーリィ。 前2作と異なり、抽象的かつ非現実的なストーリィです。率直に言って馴染めないものを感じます。 ブルースノウ・ワルツ/グラジオラス/タイムカプセルのこと(あとがきにかえて) |
●「檸檬のころ」● ★★ |
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2007年02月
2005/03/27 |
田んぼと山に囲まれた、コンビニもないような田舎の県立高校。 「あとがき」によると、「地味な人なりの青春」を書いてみたかったというのが執筆の動機とのことですが、そんな風に書かれたこの青春物語は本当に気持ちいい。 タンポポのわたげみたいだね/金子商店の夏/ルパンとレモン/ジュリエット・スター/ラブソング/担任稼業/雪の降る町、春に散る花 |
●「青空チェリー(文庫版)」● ★★☆ |
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2005年08月
2005/08/11 |
本書は、単行本「青空チェリー」から大幅に改編。 「ハニィ、空が灼けているよ。」は単行本時に比べてグッと良くなっています。ギャルっぽさがあった前作に比べて、ずっと落ち着きが良くなったという印象です。 単行本収録の「なけないこころ」に替えて本書に収録された「誓いじゃないけど僕は思った」は、中学時代の同級生の面影を忘れられない主人公という点では同一ですが、主人公は女性から男性に代わり、ストーリィも全く別のものになっています。 ハニィ、空が灼けているよ。/青空チェリー/誓いじゃないけど僕は思った(解説:藤田香織) |
●「陽の子雨の子(ひのこあめのこ)」● ★ |
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2010年04月
2006/04/23 |
中学生の男の子・神田川夕陽、24歳になりながら未だ子供っぽさをひきずっている小畑雪枝、家出した15歳の時に雪枝に拾われそれ以来4年間同棲している梶間聡、その3人の物語。 夕陽の担任教師の元に、高校の同級生だった雪枝が遊びに来ていたのが2人の出会いのきっかけ。 24歳の雪枝、19歳の聡に対して、まだ中学生ながら夕陽の健やかさ、聡明さが印象的。年上の女性に惑わされず、小学校の同級生だった清水という女の子の元へちゃんと戻っていく夕陽くんは、かなり出来過ぎの観があります。 |
●「夜の朝顔」● ★★ |
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2006/05/21 |
田舎の女の子・センリ(大原千里)の小学校時代、その成長していく過程を連作短篇風に描いた作品。 私の好きなケストナーはその作品の中で、子供にだって大人と同じように悲しいこと、辛いことがあるんだと語っています。本作品もそれと同じような内容を含んでいます。 豊島さんは「あとがき」の中で、小学校時代には楽しいことも沢山あった筈なのに、あの頃の記憶には「しこり」が多い。明るい子どもでいることに精一杯だったので気持ちに余裕がなく、言葉にならないかたちで後に残ってしまったのかもしれない、と語っています。 センリは女の子なので、小学生時代の思いには私と異なるところがありますが、センリの気持ちには共感できるところが多い。センリと同級生の女の子たちの関係を描いている部分はとくに秀逸なところです。センリが特に目立ちもしない、ごくフツーの女の子であるところが何といっても好い。 入道雲が消えないように/ビニールの下の女の子/ヒナを落とす/五月の虫歯/だって星はめぐるから/先生のお気に入り/夜の朝顔 |
●「エバーグリーン」● ★★ |
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2009年03月
2006/08/16
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高校最後の文化祭で直前にバンド解散となり、舞台で一人歌ったシン。そのシンを密かにずっと想っていたアヤコ。バンドが直前解散してふてくされていたシンをアヤコが励ましたことから、2人は口をきき合うことになる。 シンにも共感を覚えますが、シンへのときめく想いを大切に抱えているアヤコの人物像がとても瑞々しい。特に初めてシンに一緒に帰ったとき家の玄関に倒れ込んだまま「しあわせをかみしめている」シーンは圧巻。 健やかでとても爽やかなストーリィ。すぐセックスが飛び出す最近のラブ・ストーリィと好対照と言える作品です。それは豊島さん自身のデビュー作「青空チェリー」と比較しても言えること。現実に有り得ないことのように思えるからこそ、なおさら愛おしく大切にしたくなります。 |
●「底辺女子高生」● ★★ |
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2006/08/19 |
豊島ミホ・ファンであるにもかかわらず、豊島ミホさんてどんな人なのか判らない。そんな私にとって、本書は待ってました!と言うべき一冊です。 それにしてもなァ、豊島さんがこんな高校生だったとは思いも寄りませんでした。やっぱり作家になるような人は、ちょっと人と違う道を辿ろうとするのかもしれない。 一人称問題/通学電車の先輩へ/完敗家出マニュアル−旅立ち篇/〃−大阪篇/〃−金銭問題篇/〃−捕獲篇/学祭の絶望/地味女子は卓球/下宿生活の掟/紅ショウガの夏休み/夏の終り/あんたらなんかだいきらい/男子こわい/雪と花束/チョコレイト/直木賞をとる方法/赤点クィーンの思考回路/ぼくたちの屋上/もさもさ/夜空の向こう/下宿生の一日/あの二月/卒業式は二回 |
●「神田川デイズ」● ★☆ |
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2010年11月
2007/05/23
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大学に入学した主人公たちが送る瑞々しい青春小説、なんてのと本書はまるで異なり、豊島さん曰く「五月病の大学生をさらにいたぶるような痛々しいキャンパス小説」とのこと。 そうなんですよねぇ、大学に入ったから、都会に出てきたからといってそう面白いことが起きるはずはない。・・・ない、のでしょうか?
3年間を下宿の部屋に埋もれて過ごした男3人、友達がちっともできない地方出の女の子、大学生活を謳歌したいとジタバタしている男子学生、自分たちの夢が浅はかであったことを気づかされた女子学生2人、周囲との違和感を知ってしまった女子学生、等々。 なお、本書は田舎の高校生活を描いた「檸檬のころ」連なる青春小説だろうと私は受け留めています。この先さらにどう連なる作品が書かれていくか、私としてはそれが楽しみです。 見ろ、空は白む/いちごに朝露、映るは空/雨にとびこめ/どこまで行けるか言わないで/リベンジ・リトル・ガール/花束になんかなりたくない |