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「ダンス」 ★★ 新潮新人賞 | |
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新潮新人賞受賞作にして芥川賞候補作。 主人公の「私」は新卒入社3年目の会社員。同じ係の下村さんはいろいろ教えてくれる、頼れる先輩。 ところがその下村さんの様子がおかしくなる。 その事情はというと、同じ係の田中さんと同棲2年、結婚も視野に入っていたのに、何とその田中が入ってきたばかりの非常勤社員=佐藤さんと付き合いだし、別れるに至ったというもの。 それ以来、下村さんは休みがちになったり、突然派手な化粧にミニスカートという恰好で出社してきたり、婚活に邁進したりと、うって変わった様子。 そんな下村さんの様子を私は、まるでダンスを踊っているようと表現する。 しかし、休まれた分の仕事のしわ寄せが来てイライラするし、下村さんから酒や転居先探しに付き合わされる等、仕事以外でも忙しい。 頬をビンタしてやりたいと思いつつ、もがいているようなその<ダンス>に付き合い続けている、下村さんと私の先輩・後輩関係が何とも面白い。 私は下村さんに対して何か尽くす、というようなことはなく、ただ付き合っているだけなのです。 さて、それから十数年後、二人はどうなっているのか。 そこにもまた、本作の面白さがあります。 僅か 120頁程の中篇ですが、含蓄に富んでいる作品だなぁ。 |