竹本健治作品のページ


1954年生。77年「匣の中の失踪」を雑誌「幻影城」に連載して作家デビュー。

 
1.
キララ、探偵す。

2.キララ、またも探偵す。

3.かくも水深き不在

  


 

1.

●「キララ、探偵す。」● ★☆


かくも水深き不在画像

2007年01月
文芸春秋刊
(1619円+税)

2010年01月
文春文庫化

   

2007/03/02

 

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いろいろな探偵像があるものですが、今度は美少女メイド型アンドロメイドかぁ〜。
オタク大学生の乙島侑平の元に突如送りつけられてきたものは、なんとメイド服に身を包んだ美少女ロボット“キララ”
電子機器メーカーの研究所に勤める叔父が勝手に侑平をモニターの一人に選定し、新発明のメイドロボットを送りつけてきたという次第。
そのキララ、単なるぶりっ子風のメイドというだけではありません。侑平とキララがお互いの特定部位を触れ合うと、夜用セクサロイド=“クララ”にモードチェンジするというから凄い!
叔母の妙子が私立探偵事務所を営んでいる所為か、いつのまにか侑平も事件に巻き込まれ、キララまたはクララの助けを借りて、というより引きずられて事件の解決に活躍(?)するという連作ミステリ。
キララも存分に活躍するものの、それ以上の冴えを発揮するのが裏モードのクララ。夜のお務用とあってクララの洞察力=推理力はキララを上回って明晰、ということらしい。
いざ正念場となると、キララは自らを犠牲にしてクララにモードチェンジし、ご主人様=侑平のために名探偵ぶりを発揮するという次第です。

まぁ、ミステリ自体はそれ程のことはないにして、侑平+キララという組み合わせが楽しい。そのうえ侑平の周りには、オタク学生のくせして「立体偶像研究会」仲間の光瑠、独身美女の妙子叔母、グラマーな研究者ミス・キャンベルとなかなか華やか。
ミステリよりも、キララとクララのメイドぶり+探偵ぶりが楽しい本書ですが、一番楽しいのは女王様風サド気味のクララに童貞オタクの侑平が過激にいたぶられる場面かも(苦笑)。

キララ、登場す。/キララ、豹変す。/キララ、緘黙す。/キララ、奮戦す。

    

2.

●「キララ、またも探偵す。」● 


キララ、またも探偵す。画像

2008年05月
文芸春秋刊
(1524円+税)

 
2008/06/04

 
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美少女メイド型アンドロメイドとフヌケ大学生の乙島侑平というコンビが活躍する連作ミステリという着想に加え、“キララ”と“クララ”という2つのモードがあるというアイデア。
そのキャラクター、とくにクララの部分がすこぶる面白かったので、今回も楽しめる筈と期待して読んだ第2弾だったのですが、がっかり。

メイド型ロボットというキャラクターを生かしての活躍というところに魅力があった筈なのに、冒頭の「キララ、失踪す。」事件は何となく解決してしまった風であるうえに、「光瑠、探偵す」の主人公は侑平の「立体偶像研究会」仲間である相田光瑠

ところがその2篇は未だしもで、「キララ、赤面す。」におけるミス・キャンベルの危機とその真相となると、これはもうルール違反ではないか、と言いたくなる。
これではもうミステリではなく、・・・・みたいではないか。

結局、本書中セクサロイドへのモードチェンジによる“クララ”の登場は皆無で、期待外れに終わりました。

キララ、失踪す。/光瑠、探偵す。/キララ、赤面す。/雨の公園で出会った少女

      

3.

●「かくも水深き不在」● 


かくも水深き不在画像

2012年07月
新潮社刊
(1600円+税)

  

2012/08/16

  

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仕掛けが多くて、結局終わってみると仕掛けだけだった、という作品、私はあまり好きではないのですが、本書もそうした一冊。

幻想的なホラーに現実的なホラー、そしてストーカー話に誘拐劇とてんでバラバラなストーリィとしか思えませんが、各篇主人公が語る打ち明け話の共通した聞き役として登場するのは、精神科医の天野不巳彦。その天野が時として探偵のような真相解明を行うのですから、この天野という存在はどういう位置づけなのか。
そして最終章で、バラバラと思えたストーリィがひとつも物語に収斂するのですから、これはもう何と仕掛けに満ちた作品であることか。

余りに仕掛けがあり過ぎて私の好みではないのですが、全体にとらわれず一つ一つの仕掛けだけを見ているかぎり、それなりの面白さがあります。
単純に不気味な恐ろしさが募る
「鬼ごっこ」、足元が突然抜けた恐怖を味わう「恐い映像」、そして主人公の一方的な思い込みの強さ+スリリングという「花の軛」。また「零点透視の誘拐」には予想外の真相あり、というように。
短篇集として読むか、連作風長篇小説として読むかは、読み手の好み次第。

鬼ごっこ/恐い映像/花の軛/零点透視の誘拐/舞台劇を成立させるのは人でなく照明である

    


  

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