高山羽根子
(はねこ)作品のページ


1975年富山県生、多摩美術大学美術学部絵画学科卒。2010年「うどん キツネつきの」にて第1回創元SF短編賞佳作を受賞し作家デビュー。16年「太陽の側の島」にて第2回林芙美子文学賞、20年「首里の馬」にて 第163回芥川賞を受賞。


1.うどん キツネつきの

2.カム・ギャザー・ラウンド・ピープル

3.首里の馬

4.パレードのシステム

 


           

1.

「うどん キツネつきの       芥川創元SF短編賞佳作


うどん キツネつきの

2014年11月
東京創元社
(1700円+税)


2015/01/03


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創元SF短編賞佳作を受賞した表題作を含む、5篇からなる短篇集。
「和江が足をとめて振り返るように見上げると信じられない程の青空にゴリラが笑っていた」という一文と、不思議な題名に惹かれて読んでみたのですが、結果はと言うと「う〜ん」。

趣向が入り組んでいて判りにくい。本書の作品世界に馴染めず、その結果としてストーリィの意味も理解できないままに終始した、というのが正直な感想。
「うどん キツネつきの」「母のいる島」を初めとしてその不思議な感覚への面白さを感じる部分もあるのですけれど、戸惑う部分の方がはるかに多かった、という次第。
理解するのに必要な堪え性を私が欠いていたということなのかもしれませんが。

SFと言っても明瞭なSFに在らずして、現実ストーリィの中にSF要素が入り混じり・・・・というところか。

うどん キツネつきの/シキ零レイ零−ミドリ荘/母のいる島/おやすみラジオ/巨きなものの還る場所

              

2.
「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル come gather 'round people ★★


カム・ギャザー・ラウンド・ピープル

2019年07月
集英社

(1300円+税)

2023年08月
集英社文庫


2019/08/20


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2019年上半期芥川賞候補作ということで読書。

表題は、ボブ・ディランの名曲「時代は変る」の冒頭の一節だそうです。

僅か 110頁余りの中で、少女だった頃から現在まで、忘れ難い思い出を順番に列記。そして雨宿りのためにたまたま立ち寄り、それ以降馴染みとなったスナックで、
イズミという女性を知る。
そして、そのイズミの撮ったデモ映像の中に、高校の頃親しかったニシダを見つけてしまう。その
ニシダ、男性なのに何故かワンピース姿で先頭に立っている風。

当然ながら、時間が経てば自分も人も変わっていく。それでも忘れられない記憶というものは残ってしまう。
だから主人公はニシダから逃げようとするのか。

主人公はまだ人生の途上ですし、ニシダとこれから何が起きるのかも分からない。
人生途上の一時期を切り取ったストーリィ、と言って良いでしょう。
人生のストーリィは死ぬ日まで続く、本小説にも終わりはない、ということでしょうか。

               

3.
「首里の馬 ★★          芥川賞


首里の馬

2020年07月
新潮社

(1250円+税)

2023年01月
新潮文庫

2020/10/18

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芥川賞受賞作ということで読んだのですが、恥ずかしながらもうひとつ理解できていない、というのが正直な処です。

主人公の
未名子は沖縄で、父親の遺した一軒家に一人暮らし。
不登校だった中学生の頃から、郷土史家が個人的に作った資料館で資料整理を手伝っている。
一方、仕事は事務所でたった一人、世界の遠く隔たった場所に一人でいる人たちに、オンライン通話でクイズを出題するオペレーター。
そんな未名子の家の庭に、台風の夜、幻の
宮古馬が迷い込んでくる・・・。

何がどういうストーリィなのかもうひとつ理解できないままですが、未名子だけでなく、郷土史家(娘はいるのですが)も、クイズの解答者たちも宮古馬も皆、この広い世界で一人きりという印象を受けます。
それでも彼らが存在している意味は、思い出や過去の記憶を保っているから、でしょうか。

もの言わぬ宮古馬にまたがって歩く未名子の姿が、何やら象徴的に感じられます。

                

4.
「パレードのシステム ★★


パレードのシステム

2023年01月
講談社

(1500円+税)


2023/02/27


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祖父の葬儀に出席した主人公、母たちの会話から、その祖父が台湾生まれであったことを知ります。
(台湾が日本の統治下にあった時代に両親が台湾へ移住、そこで生まれたという経緯。「
湾生」と言うらしい)。

その後、バイト先で台湾からの留学生=
梅さんに台湾のことを聞いたことをきっかけに、梅さんに勧められてその祖父の葬儀に参列することになり、主人公は台湾へ行くことになります。
その台湾の葬儀は、賑やかで陽気、まるでお祭りのようで、
日本の葬儀スタイルとは対照的です。

そうした違いを目にすることによって、葬儀とは人生の最後のセレモニーだということが印象付けられます。
そして思い出したのは、学校で唯一の友人とも言える
カスミが、自分の作った芸術的な仕掛けによって自死したこと。その原因は自分にあったのかもしれないという思いが、カスミの死を忘れられない重荷にしています。

自然と、生と死の関わり、移ろいを感じさせられるストーリィ。
それが何かをきちんと言えないのですが、胸の内に何か伝わってくるものがあります。

         


   

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