30代で書き始め、中断しながらも少しずつ書き続け、20数年をかけて書き上げた処女作とのこと。
奄美大島の北部、手花部(てけぶ)という小さな村が舞台。
主人公の光が通う、全校生徒50人足らずの小さな小学校に、西牟田智士という若い新米教師が赴任してきます。
その西牟田先生は、熱血漢である一方で、教師のくせに暴走してしまうこともしばしば、という人物。
その西牟田と光たち生徒たちとの、卒業までの熱い2年間を描いた自伝的小説。
出版社紹介文に、奄美版「二十四の瞳」と紹介されています。
時代設定や教師と教え子の関係も同作とは異なりますが、生涯にわたって忘れられない時間を過ごした思い出、という点で共通するものだろうと思います。
奄美の風土、方言、大人たちとの関係、この土地ならではの空気が本書全体から溢れ出ています。
そして時に脱線しながら、熱く子供たちに語りかけていた教師。
勉強や知識より、そうした熱い語りかけの方がどんなに子供たちにとって貴重であったことか。
主人公の光、残念ながらいい子とはとても言えません。むしろわがままで自分勝手でお調子者、加えて依怙地なところもある小学生として描かれていますが、そうした悔いを抱えているからこそ忘れられない思い出になったのかもしれません。
私にとっては、見も知らぬ奄美の風景や人々が何とも清冽な印象を残した作品です。
はじめに/1.新米の西牟田先生/2.奄美の夏/3.種おろし/4.学芸会−万雷の拍手/5.チョオブェ先生/6.光の小学生最後の夏/7.先生、そして級友との別れ/おわりに
|