高橋順子
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1944年千葉県海上郡飯岡町(現・旭市)生、東京大学仏文科卒。77年第一詩集「海まで」を刊行、90年「幸福な葉っぱ」にて現代詩花椿賞、96年「時の雨」にて読売文学賞を受賞。

 


   

●「緑の石と猫」● ★★




2009年10月
文芸春秋刊

(1429円+税)

  

2009/11/07

 

amazon.co.jp

本書もまた、このところ多くなった“ファンタジー”のひとつと言ってしまえばお仕舞いなのですが、そう言ってしまいたくない気持ちがあります。
ファンタジーというより、不思議な世界を繰り広げてみせる短篇集、と言う方が似つかわしいように思います。
本書を読んでいる内に、いつの間にか読み手もその不思議な世界の中に主人公と共に取り込まれてしまっている、そんな風なのです。
その辺りが本書の魅力、実にお見事です。

昔飼っていた猫が、あの世とこの世を行き来できるようになったからと現れてからの不思議な出来事を描く「緑の石と猫」
全身緑色で生まれたという兄弟と花屋で働く女性との交誼を描いた「苔の花」
ぬいぐるみのペンギンたちが会議をする様子を覗き見た結果光にされてしまった女性社員を描いた「ペンギンたちは会議する」
亡き夫の望みを果たそうと花観音の島で巡礼する様子を描いた「花観音の島」
これらは中篇で、いずれも忘れ難い味わいがあります。
また、「猫のワルツ」「水ヒヤシンス」「世界の果て博物館」という小品には、ドキッとする怖さ、危うさあり。

最後を締める「さよりおばあさん航海記」は、最後の蒸気船で世界一周クルーズに出かけた主人公が、船上で書いた友人に向けた手紙、という趣向。
のんびりした気分と物珍しさが溶け合って、なかなかに楽しい。

猫のワルツ/緑の石と猫/龍宮の門/苔の花/水ヒヤシンス/ペンギンたちは会議する/赤いオルゴール/花観音の島/世界の果て博物館/さよりおばあさん航海記

 


   

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