高楼方子
(たかどのほうこ)作品のページ

 
1955年北海道函館市生、東京女子大学文理学部日本文学科卒。96年「いたずらおばあさん」「へんてこもりにいこうよ」にて路傍の石幼少年文学賞、2000年「十一月の扉」にて産経児童出版文化賞フジテレビ賞、06年「わたしたちの帽子」にて赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞、「おともだちにナリマ小」にて産経児童出版文化賞・JBBY賞を受賞。


1.時計坂の家

2.ゆゆのつづき

 


               

1.
「時計坂の家」(絵:千葉史子) ★★


時計坂の家画像

2019年10月
リブリオ出版

(1800円+税)

2009/09/21

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12歳のフー子、従姉妹のマリカから手紙で誘われ、夏休みを祖父の住む汀館(みぎわだて)で過ごそうとやってきます。
その家は、時計台のある坂からちょっと入ったところで、祖父は古いお手伝いのリサさんと2人だけで暮らしている。
その家でカチカチという音がして懐中時計が花時計に変わると、その扉は壁でしかない筈なのに、その向こうには不思議な緑の園が広がっているのをフー子は目にします。

ロシア革命から亡命してきた有名なロシア人の時計師チェルヌイシェフと、行方知れずになった祖母がその不思議に関係しているらしい。
フー子はその緑の園をさらに知ろうと足を踏み入れ、一方、従兄の中学生・映介はチェルヌイシェフの謎を調べ始めます。
2人が経験する、ひと夏のミステリ冒険+ファンタジー冒険という複合ストーリィ。

その結果何がどうなるというより、“ひと夏の冒険”で終わった観があるのは、やはり児童向け物語らしいところか。

   

2.
「ゆゆのつづき ★★☆


ゆゆのつづき

2019年10月
理論社

(1400円+税)



2019/11/23



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主人公の杉村由々は50代の翻訳家。
由々は仕事場でふと、自分が11歳の少女だった、小5の夏の一日を思い出します。
そのプロローグを皮切りに、11歳だった時の
「ゆゆ・あの夏の日」と、46年後の現在を描く「由々・この夏の日々」の2部構成で綴ったストーリィ。

仲良くなりたいと会いに行った女の子にすげなくされ、暗い気持ちを抱えての帰り道、ゆゆは思いがけなく、様々な出会いをします。
そして46年後の今、由々は11歳の時から忘れられない存在となった男子大学生と同じ名前の青年と出会い、当時が甦ってきたような出来事と繰り返し出会います。
まるでタイムスリップして当時が甦ってきたような感じ。

多感な11歳の少女であった時の瑞々しい気持ちを、50代になった今でもその気になればいつでも取り戻すことができるのだ、というメッセージが伝わってくるように感じます。
そう、幼い頃の自分と現在の自分は、違う人物ではない。ずっとあの日から続いてきた、同じ人物なのですから。
 
エッセイ的な、詩情溢れるストーリィ。
誰しもそんな一日を、心の中にしまってあるのではないでしょうか。

※ストーリィ中、私も好きだった
ジュール・ヴェルヌ「十五少年漂流記」E・ポーター「少女パレアナが話題に上るのも嬉しい。

1.ゆゆ・あの夏の日/2.由々・この夏の日々

       


   

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