鈴木一功
(いっこう)作品のページ


1952年東京都生。俳優、劇作家、劇団レクラム舎主宰。

  


     

「ファイティング40(フォーティ)、ママはチャンピオン」 ★★


ファイティング40、ママはチャンピオン

2016年07月
新潮社刊

(1500円+税)

 


2016/09/25

 


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小劇団の主宰である主人公、妻は劇団の女優であると同時に、2人の息子の母親、PTA会長、等々。
ある時、妻に勝てない女プロボクサー役を振り、近所のボクシングジムに通うよう提案。座付役者であり座長の演出家でもある主人公の命にしたがってしぶしぶ通い始めた妻でしたが、何時の間にか勢いがつき、ボクシングはすっかり妻の趣味に。
ところがジムの会長が、奥さんにはボクサーの才能があると、40歳という年齢にもかかわらずプロへ推薦。
ついに妻の山川佳代子は、本名をそのままリングネームにして、プロのリングに上ることになります。

余りに想像を超えたストーリィに仰天しますが、予想を超えた妻の活躍ぶりに主人公も2人の息子も動顛、かつ唖然。何とも複雑な心境ですが、それでも妻の迫力に応援せざるを得ないという展開が途轍もなく面白い。主人公と一緒に圧倒されるばかりです。

大人しい亭主と対照的に、妻の方が元気が良いという取り合わせは、今やそう珍しいとも言えませんが、それにしても本書のような展開になると、とても亭主は批判したり、引き止めたりはできませんよね。
妻の怒りを買って喧嘩となれば、ノックアウトされるのは確実ですから。

妻の猪突猛進というべき奮闘と、指を咥えて見守るしかない夫の取り合わせが愉快な、ユニークな作品。
なお、一応フィクションとのことですが、実際にジムの練習生となってボクサーになりたくなっちゃったという作者の妻にして劇団女優の松阪わかこさんがモデルだそうです。

 


  

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