鈴木大介
作品のページ


1973年千葉県生。長年にわたり、裏社会、触法少年少女らを中心に取材。著書に「最貧困女子」「家のない少女たち」等。

  


       

「里奈の物語 rina's stories ★★☆
 (文庫・・・2巻:「里奈の物語−15歳の枷−」「里奈の物語−疾走の先に−」)




2019年11月
文芸春秋

(1900円+税)

2022年02月
2022年03月
文春文庫



2019/01/03



amazon.co.jp

余りに凄絶で辛いストーリィ。
僅か18歳までの半生ともいえぬ、僅かな少女時代を描いているだけなのですが、ほぼ半生を描いてしまったのではないかと思うくらいの衝撃度です。

高橋里奈、1992年、北関東の地方都市=伊田桐市生まれ。
里奈を育ててくれているのは実母ではなく、伯母の
高橋幸恵。その幸恵、昼働き、夜も水商売で働いているため、里奈と幸恵の実子である比奈の二人は、転々と幸恵の知り合いのところに預けられ、今は倉庫のような処で夜を過ごすことが多い。
やがて里奈の実母である
春奈が姿を現したかと思えば、新たに春奈の子か、雄斗と琴美という幼い子ばかりか街金からの借金まで姉の幸恵に押しつけ、またもや姿をくらましてしまう。
いくら幸恵が頑張って働いても、借金まで負わされた状況では限界があるのは当然のこと。
ついに幸恵は警察の厄介となり、幸恵や里奈が守ろうとした家族はバラバラになり、里奈は児童養護施設へ。

しかし、里奈の人生は一向に順調とはいきません。むしろ、里奈からそうした道に飛び込んでいるとしか思えません。
もう一度家族で一緒に暮らしたい、そのためには早く自立したいと思っても、里奈が選べる手段は限られています。

驚くのは、生きる上での里奈の選択肢の狭さです。
それは親である幸恵、幸恵の後ろ盾になっている
志緒里ママの生き方しか知らず、施設に入った後も年下の子供たちの世話ばかりしていてろくに小学校も通わずに終わってしまった経緯と無縁ではありません。そのくせ、男女関係、性風俗商売のことについては詳しいというアンバランス。

生まれ育った環境の所為で、その後の人生まで選択肢が限られてしまう、里奈や仲間の少女たちが背負った運命は、何と凄絶なものなのか。また、彼女たち自身がそれをそうと気づかずにいる処もまた、衝撃的です。

ただ、唯一救いだったことは、里奈が自分の人間性を損なうことだけはしなかったこと。
結局里奈が一番欲しかったものは愛、その象徴として家族だったのでしょうか。その意味では最後、里奈はようやく最初の出発点に戻った、と言って良いのではないかと思います。
里奈と、その仲間の少女たちに、救いと幸がありますようにと祈る気持ちにさせられます。

1.倉庫育ちの少女/2.児童養護施設・六恩園/3.15の旅立ち/4.職業、売春/5.ヤクザ森永/6.少女たちの独立/7.喪失の果て/8.帰郷

   


  

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