周防 柳(すおう・やなぎ)作品のページ No.2


1964年東京都生、早稲田大学第一文学部卒。編集者・ライター。2013年「八月の青い蝶」(「翅と虫ピン」改題)にて第26回小説すばる新人賞を受賞し作家デビュー。また同作にて15年第5回広島本大賞「小説部門」大賞を受賞。


1.八月の青い蝶

2.逢坂の六人

3.

4.蘇我の娘の古事記

5.高天原−厩戸皇子の神話

6.とまり木

7.身もこがれつつ

8.うきよの恋花

 


                    

8.
うきよの恋花−好色五人女別伝− ★★


うきよの恋花

2022年10月
集英社

(2000円+
税)



2022/11/02



amazon.co.jp

色恋のどろどろした話は苦手なもので、どうしようか躊躇したのですが、周防作品であるからには読んでみた方が良いかな、と思い、挑戦する気持ちで読んだ一冊。
そうして読んだ結果はというと、読んで正解。流石は周防さん。

本作の元にあるのは勿論のこと、
井原西鶴「好色五人女」
さすがに西鶴本を読んではおらず、五人女の内容を知るのは今回が初めてです。
とはいえ、各篇、周防さんの新たな物語になっています。

どの篇もストーリィ展開が実にスリリング。
西鶴の書いた各物語の裏にどんな真相があったのか、という趣向で彩られており、ミステリ的な面白さがあります。
そしてその感覚は、現代的。
だからこそストーリィ明快でキレがあり、小気味良い。
これが面白くなかろう筈がない、という出来の良さです。

どの世にも、男女の恋愛があり、それと同時に困難や妨害もあり、それでも恋愛は止まらない、無くならない、ということでしょう。

なお、最終篇の
「おまん源五兵衛、または、お小夜西鶴」は、西鶴「おまん源五兵衛」の話というより、西鶴自身を主人公にした篇。
実はそれまでの4篇、西鶴を俳諧の師とする薬売りの山善が、全国を歩き回る中で、西鶴の興味を引きそうな話を拾い集めて来た、という設定。
そして、この篇では西鶴が、亡き女房=お小夜との過去を振り返る、という趣向になっています。
その所為か、前4篇の印象からは様変わり、ちょっと苦い味わいになっています。

八百屋お七/おさん茂兵衛/樽屋おせん/お夏清十郎/おまん源五兵衛、または、お小夜西鶴

       


   

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