砂田麻美(まみ)作品のページ


1978年東京都生。映画監督。慶應義塾大学総合政策学部在学中から映像制作に携わる。卒業後はフリーの監督助手。2009年、同年末に死去した父を主演としたドキュメンタリー映画「エンディングノート」にて日本映画監督協会新人賞等、数々の賞を受賞。また、小説作品として2011年「音のない花火」あり。

 


           

「一瞬の雲の切れ間に ★★


一瞬の雲の切れ間に

2016年01月
ポプラ社刊
(1400円+税)

2018年04月
ポプラ文庫化


2016/03/07


amazon.co.jp

主婦が運転する車と小学生が乗っていた自転車がぶつかり、8歳の少年()は事故死。
自転車側にも過失ありとして刑事事件にはならなかったものの、運転していた主婦(
美里)、飲酒していたため助手席に乗っていた夫(健二)、亡くなった少年のシングルマザー(吉乃)それぞれは、事故以来痛みを抱えながら日々を過ごしています。
本書は、事故の後、罪に痛む心を抱えて生きる関係者たちの姿を描いた連作風長編ストーリィ。

時間が経って少しずつ気持ちは収まっていくのでしょうけれど、その痛みが消えるということはないのだ、ということをリアルに感じさせられます。
最初に登場する
千恵子は、健二と同じ職場の不倫相手の女性。一見関係ない女性にまで影響は及ぶのだという第1章は鮮烈です。

一方、最終章に登場する「浩一」は、関係者の中に見当たらない名前で、その理由が明らかになる最後まで「??」の存在。
でも、彼の登場によって最後、ほっとさせられるのも事実。

消えることのない心の痛み、それは、発生からちょうど5年経った東日本大震災で犠牲になった方々へ寄せる思いにも共通するのではないかと思います。
映画を観るような思いで読んだ一冊です。


夏、千恵子の物語/秋、吉乃の物語/冬、健二の物語/春、美里の物語/春、浩一の物語

                 


   

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