柴崎竜人
(しばざき・りゅうと)作品のページ


1976年東京都生、慶應義塾大学経済学部卒。東京三菱銀行退行後、バーテンダー、コンセプトプランナーなどを経て作家デビュー。ドラマ「レンアイカンソク」など脚本も多数手掛ける。

  


     

「三軒茶屋星座館 ★★


三軒茶屋星座館画像

2013年12月
講談社刊

(1300円+税)

2016年02月
講談社文庫化

 

2014/02/09

 

amazon.co.jp

三軒茶屋駅の裏手、古びた繁華街の中にある築50年以上のおんぼろ雑居ビル最上階に、その店はあります。
主人公の
大坪和真が半年前に開店したその店は、プラネタリウム兼バーの “三軒茶屋星座館”。
そしてその店に突然現れたのは、10年ぶりの再会となる弟=
創馬と、娘だという8歳の美少女=月子
創馬は月子に和真のことを「もうひとりのお父さん」だと言い、そこから風変わりな3人家族の同居生活が始まります。

余り流行らない星座館に来る客は、男女を問わず何かしら悩み事を抱えた人間ばかり。
和真が現代的にくだけた感じで語る、星座の元になったギリシア神話の神々のドタバタ劇に誘われ、各人の口が開かれます。
その際の和真の決めセリフは、「気持ち良く、僕にしゃべっちゃいなよ」というもの。そして和真と月子、関係者らがその打ち明け話に耳を傾けます。
各章にて悩み事を抱える人物像は様々。
36歳の元モデルを恋人に持った高校生=
奏太、イケメンカメラマンである恋人の浮気を心配するガールズバー嬢の凪子、母親の料理店の経営状況を心配する奏太の同級生=藍子、ブラック金融会社に付きまとわれる奏太、学校で友達のいない月子、と。

さながら星座館を背景にした群像劇という印象ですが、その根底には親子関係、家族関係が無縁ではありません。
それが鮮明に判るのは最後の章
「うお座」において。
一緒に夜空の星座を眺めるというのも、ひとつの家族風景なのだと感じさせられます。
ギリシア神話の現代語りを聞く面白さ+家族の情愛というストーリィ。中々味のある趣向です。


1.オリオン座/2.おおいぬ座/3.山羊座/4.水瓶座/5.うお座

 


  

to Top Page     to 国内作家 Index