瀬戸良枝作品のページ


1978年石川県生、近畿大学大学院文芸学研究科修士課程修了。「幻をなぐる」にて第30回すばる文学賞を受賞。

 


  

●「幻をなぐる」●       すばる文学賞


幻をなぐる画像

2007年01月
集英社刊

(1300円+税)

 

2007/01/22

 

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理想の男とようやくセックスできたというのに、その直後に相手の正体が見えて幻滅。さぁそれから身体を鍛えることに専心し、相手を叩きのめすことに執念を燃やす、という滑稽味あるストーリィかと思ったのですが、予想外れ。
本書の2篇とも、どす黒く闇の中にうごめく妄想気味のストーリィという印象です。それも相当にセックス絡みという作品。
どうもこの手の作品は苦手です。

「幻をなぐる」の女主人公の中川は、絵の道を進むという夢を諦めて地元に戻ってくる。その地元で再会したのは、高校時代に絵の才能溢れ憧れを抱いていた相手。
旧交を温めた2人は自然に身体の関係に進んだのですが、奴の狙いは新興宗教が政治に進出するにあたっての票集めにあったとすぐに判ります。
男に幻滅し怒りを覚えながらも身体が奴を思い切れず、それをまた奴に好き勝手に言われても、それを一蹴することができない。そんな自分への自虐的な感情と相手への怨念を、自分の身体を鍛えることで打ち払おうとしているようなのですが、結局すべての行動は幻を相手に一人で大騒ぎしたも同然だったというストーリィ。それでも彼女は、自分の中にうごめく怨念、抑え難い衝動にけりをつけられたのかどうか。

「鸚鵡」も「幻をなぐる」と共通するところのある作品。
高校生の姉弟が登場しますが、2人の親は新興宗教の主催者らしい。姉の葉子は弟の親友とのセックスにふけますが、愛情がある訳でもなくただ単に自虐的に自分を肉として扱っているのみ。そんな自分を冷ややかに突き放して眺めている眼がある。

幻をなぐる/鸚鵡

 


   

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