大佛次郎作品のページ


1897(明治30)年神奈川県横浜市生、21(大正10)年東京帝国大学法学部卒。
女優の吾妻光と結婚。24年鞍馬天狗の第一作「鬼面の老女」を発表。35(昭和10)年直木賞選考委員、64年文化勲章受章。73年4月死去、享年75歳。代表作は、「乞食大将」「帰郷」「パリ燃ゆ」等。

  


 

●「鞍馬天狗」(縄田一男編) ★★

 


2002年9月
中公文庫刊

(629円+税)

 

2003/05/24

縄田一男編“時代小説英雄列伝”の中の一冊。

鞍馬天狗は、作者の大佛さんが関東大震災の後仕事がなくなって困り果て、窮余のあげく書き上げた時代小説の2作目に登場したキャラクター。その作品が本書収録の「鬼面の老女」
そこに登場した鞍馬天狗に目をつけ、編集者が続編を書くよう勧めた結果、全47作にもおよぶ代表作となった由。
本書収録の3篇が書かれた時期はかなり隔たっていますから、鞍馬天狗が変化していった様子を感じ取ることができます。
「鬼面の老女」では、鞍馬天狗はむしろ脇役的、おまけにちょっと怪しげなところもあり、「怪傑ゾロ」の登場場面を思い出させられました。
それが「黒い手型」になると、時代小説版サスペンスと言った風。さらに西郷吉之助、勝安房守が登場する「西国道中記」となると、歴史時代活劇、といっ雰囲気です。
もともとはっきりとしたイメージをもって書き始められた作品ではないこともあって、いろいろな要素を遠慮なく取り込んだ、それ故長きにわたり大衆の人気を勝ち得た理由であると思います。
今読むと、ちと古めかしく、大雑把過ぎる気もしますけれど、他にこんな時代版ヒーローはいなかった筈であり、人気沸騰した理由が判る気がします。
なお、鞍馬天狗の仲間である黒姫の吉兵衛、杉作少年は、「黒い手型」に登場しています。

【鞍馬天狗】鬼面の老女/黒い手型/西国道中記【翻訳】「夜の恐怖」金扇【随筆】鞍馬天狗と三十年【解説】「行動する思索者」鞍馬天狗

 


  

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