大森兄弟作品のページ


兄は1975年、弟は1976年共に愛知県一宮市生。2009年「犬はいつも足元にいて」にて第46回文藝賞を受賞、兄弟作家としてデビュー。

  


     

●「まことの人々」● ★★


まことの人々画像

2011年02月
河出書房新社

(1300円+税)

  

2011/10/11

  

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主人公の彼女、大学の演劇サークル部員。
今度上演する劇
「まことの人々」で、誰もやりたがらないような悪役の“エドモン軍曹”を演じることになる。
主人公と一緒にいる間にも彼女、セリフ、役作りの練習に努めますがが、次第に彼女、役に入り込もうとする余り、現実世界でもオカシクなっているのではと・・・・・。

風変わり、という印象をまず受ける作品です。
彼女が演じるエドモン軍曹という人物、自分勝手、下劣、戦争の中で食糧難にいきあたるや、同僚の兵隊を殺して食ってしまうという、醜悪な役柄。そんな役を何も女子学生が演じなくたっていいと思うのに、彼女、真剣にエドモン軍曹に成りきろうとするあまり・・・・、というストーリィ。

不気味な気分が高まっていく中で劇中劇「まことの人々」に突入するのですが(主人公は観客の一人)、舞台上にあるエドモン軍曹の迫力が凄い! まさに鬼気迫るというか、圧倒され尽くすというか、壮絶のひと言に尽きます。
この場面だけで、本書を読んだ甲斐があったと納得できる程です。
そこへ読者を運んでいく手練がお見事。

落ち着いてから振り返ると、短い登場場面にもかかわらずシェイクスピア「リチャード三世」にも劣らないリアル感、存在感を示していたと判るのですが、それだけでも大したもの。
本作品、喜劇なのか、ホラーなのか、どっちなのでしょう?

 


  

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