岡田依世子
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1965年生まれ。96年
「霧の流れる川」にて第37回講談社児童文学新人賞に佳作入選し作家デビュー。99年同作品にて第32回日本児童文学者協会新人賞を受賞。

 


   

●「ぼくらが大人になる日まで」● ★★




2007年12月
講談社刊
(1300円+税)

 

2008/04/21

 

amazon.co.jp

親の期待、あるいは親の都合、そんな重荷を背負わされて夜遅く中学受験のために塾に通う小学生たち。
本書は、中学受験を目前に控えた小学生6人がついに反乱!というストーリィ。
「反乱」といってもそれ程大きなことではありません。ドラマチックな展開を期待すると、それは的外れ。でも、当人たちにしてみれば大きなそれは大きな行動だったのです。
その一連の経験を経て、自分たちの意思で次のステップを選び取ることになるのですから。

それにしても本書に登場する小学生たち、苛酷というか気の毒というか。有名私立中学を目指す事情はそれぞれです。
ワーキングウーマンとして奮闘する母親から成功するための道筋を負わされていたり、経営していた会社が倒産して鬱病になった母親のためという理由で国立大学付属中学への進学を担わされていたり。
ひとつの目標として頑張るというのなら良いでしょう。でも本書に登場する小学生たちは、その結果として同級生たちから疎遠になり孤独を囲っていたりする。
人によっては、家に帰ってもひとりぼっちという可哀相な状況。それでも耐えて頑張ろうとする彼らは健気です。
彼らが頑張った結果として手に入れられるもの、それは親からの重圧から解き放たれる、ということに尽きるのかもしれない。

そんな彼らが初めて横で繋がった。そして6人で大事な約束を交わす。それなのに大人たちは受験のため、彼らのため、という理由で彼らの気持ちを踏みにじって恥じることもない。
彼らが放ったたったひとつの質問、「ぼくたちは、この国の大人を、信じていいですか?」にきちんと答えられる大人がどれだけいるのでしょうか。
その後に6人が選んだ道は人それぞれ。それですべて解決したとは思いませんが、彼らが初めて仲間同士として繋がり、自分の気持ちを問いかけたうえで進むべき道を決めた、という結果には素直に良かったと思います。
そして、彼らが子供たちから信用されるような大人に育っていくことを祈る気持ちです。(自分はどうなんだだ?言われると面目次第もありませんが)

     


   

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