大山尚利作品のページ


1974年東京都出身、和光大学人文学部文学科卒。

  


     

●「ライオンのつづき」● ★★




2011年04月
双葉社刊
(1500円+税)

  

2011/05/26

  

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中学時代の友人が死んだという知らせが、彼の母親から、今は40歳となった主人公の元に届きます。
そこから、25年前の思い出が語られ始める、というストーリィ。

東京に転校したら同級生たちからひどい目に遭わせられる、と脅かされ、恐怖を感じながら北海道から東京に転校してきた中学2年生、が25年前の主人公。
その恐るべき転校初日、ふとしたことから主人公は、同級生たちと自転車を土台にした飛行機作りに励むことになります。しかも転校してきたばかりだというのに、その中心人物となって。
すべては、同級生の一人の弟で
“ライオン”という綽名をもつ障害児がそれを望み、皆でその望みを叶えてやろうと気持ちが一致したことから。
主人公のふとした一言で、仲間たちの輪が築かれ、しかも実現に向ってそれが次第に強まり、さらに輪も広がっていく。それはもう、奇跡と言って良いのではないか。
しかし、結果的に悲劇がもたらされ、主人公はその責めを感じて、以来ずっとその思い出に蓋をしてきます。

主人公は全て終わったことと思っていたようですが、それは決して終わらず、主人公がこしらえた仲間たちの輪はずっと続いていた、というストーリィ。
それもまた奇跡と言わずして、何としましょうか。

決して彼らの一人一人が、純真で友達思いの子供たち、という訳ではありません。
自分勝手だったり、見栄っ張りだったり、余計にお喋りだったり、そこはどこにでもいるような、子供たちらしい子供たちです。
それでも子供たちがしっかりと繋がり合い、ずっとその関係を大事にしてきた、というところに、本作品の感動があります。

理屈で考えるよりも、まず感じたい、という作品です。 

 


  

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