西崎 憲作品のページ


1955年青森県生。音楽制作と翻訳に携わる。訳書に「ヴァージニア・ウルフ短篇集」「マンスフィールド短篇集」「英国短篇小説の愉しみ」等あり。2002年「世界の果ての庭」にて、第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。

 
1.
世界の果ての庭

2.
ゆみに町ガイドブック

  


        

1.

●「世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ」●   日本ファンタジーノベル大賞


世界の果ての庭画像

2002年12月
新潮社刊
(1300円+税)

2013年04月
創元推理文庫化

   
2003/01/31

  
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う〜ん、判らない、というのが正直な感想。

本書は、55篇のショート・ストーリィから成る一冊。
中には僅か1頁、2頁という話もあり、小さなストーリィが一冊の中に沢山散りばめられている、という印象です。
その55篇のストーリィはバラバラなものかというと、そうではなくて、幾つかのストーリィが交錯しながら、延々と続いていることにすぐ気がつきます。
女性作家のリコと、日本文学研究者であるスマイスという外国人男性の出会い、2人の関係の進展。
また、リコの行方不明になった祖父らしい脱走兵が奇妙な空間世界に紛れ込んでしまった話。
さらにスマイスの縁から、明治時代の文学者、江戸時代の国学者にまで、ストーリィは繰り広げられていきます。
一方、駆け落ちした母親が突然帰ってきたと思ったら、若返る病気にかかっていると言う。
それら幾つか基軸となるストーリィも、元を辿ると、リコの関係に行き着くようです。
どの篇も端正で、困惑することなく、それなりに楽しめます。小さなストーリィを積み上げて、大きなストーリィを作り上げるという試みなのでしょう。
ただ、正直言ってよく判らない。(苦笑)

    

2.

●「ゆみに町ガイドブック A Guide to Yumini-cho」● 


ゆみに町ガイドブック画像

2011年11月
河出書房新社
(1600円+税)

2012/02/13

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「ゆみに町(ちょう)ガイドブック」、題名そのままに、独身女性の小説家兼翻訳家が自分の住むこの町を案内する、という趣向のストーリィ。
しかし、本ストーリィは単層ではありません。パソコンを操作して町を構築していく作業を担当している“
雲マニア”が処理をミスったことから町自体がおかしくなるという仮想ストーリィに、クリストファー・ロビンを探し求めるうさぎというファンタジーなストーリィがそれに重なり合います。

どこまで現実なのか、どこから仮想なのか、判然としないストーリィ。
要はどういうストーリィなのか、よく判らないのです。
その点、最初に読んで挫折した日本ファンタジーノベル大賞受賞の
世界の果ての庭と読後感は似ています。
でも決して不愉快ではないのである。判然としないところにある非現実感が快くも感じられるのです。
まぁ、結局それに尽きる、と言う他ないのです。

      


  

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