西田俊也作品のページ


1960年奈良県生、大阪外語大学中退。ジュニア小説にて作家デビュー。著書に「オオサカンドリーム」「両手のなかの海」「サマロブシネマ」「love history」等あり。

  


 

●「やんぐとれいん」● ★☆

 

 

2004年1月
文芸春秋刊

(1667円+税)

 

2004/02/05

32歳になった高校の同窓会。幹事のアメが企画したプランは、“青春18きっぷ”で行き先未定の旅にでよう、というものだった。集まったのは、男4人、女2人の計6人。

この“青春18きっぷ”というものを私は知りませんでしたが、20年も前からあるもので、全国のJR各駅で売られている季節限定のフリー切符。普通列車に限り乗車可能なフリー切符が5日分、料金は11,500円なのだそうです。
つまり、5日間におよぶ同窓会ですから、普通はなかなか参加できない筈。したがって、集まってきた6人は、各々現在の生活に何らかの鬱屈を抱えている。だからこそ、高校生の頃の自分と現在の自分を見比べるために、この当てのない旅に参加した、と思われます。
6人、そして参加することなかった3人も加えて、代わる代わる第一人称にて、高校生の頃の思い、それから現在までの足取りが思い出話のように語られていきます。
人生とは当て所のない旅のようなもの。高校の同級生たちと再び行き先未定の旅にでるというのは、一人一人胸のうちで自分の来し方を振り返ってみる、ということに他ならないでしょう。
決して、解決がもたらされる旅ではありません。しかし、旅を共にしたことで、各々の胸にまた明りが灯ったような気がします。読後のそんな余韻が快い。

 


  

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