七河迦南(ななかわ・かなん)作品のページ


東京都出身、早稲田大学第一文学部卒。2008年「七つの海を照らす星」にて第18回鮎川哲也賞を受賞し作家デビュー。

 


           

「わたしの隣の王国 ★☆


わたしの隣の王国

2016年09月
新潮社刊
(1800円+税)

 


2016/10/30

 


amazon.co.jp

冒険ファンタジーの面白さと、ミステリの面白さを1冊の中で両方堪能できる一冊。
そのうえ、その両方で密室事件の推理が繰り広げられます。

大学入学直前の空手少女=神流川杏那(かんなかわあんな)は、付き合い始めた相手の研修医=相田優と、折角一緒に過ごせる日だからと、人気テーマパーク“ハッピーファンタジア”にやってきます。
ところが、普段は立ち入り禁止の筈の一角に禁止札がないからと2人して入り込んだところ、とんでもない世界、出来事に巻き込まれます。
杏那は、ハッピーファンタジアの各キャラクターがそのまま存在するファンタジー世界に。そこでクマの
エドガーが何者かに昏倒させられる場面を目撃すると共に、自分も意識を失ってしまう。気が付いた杏那は、密室事件の謎解きをすると同時に、この世界における悪人らに追われ、現実化したハッピーファンタジアの世界(テーマパークのアトラクションとシンクロしているのです)を縦横無尽にめぐる冒険へと駆り立てられます。
一方、一人取り残された優は、これまた偶然にもテーマパーク運営会社の役員が殺された事件に遭遇します。これまた密室殺人事件。

“ハッピーファンタジア”が東京ディズニーランドをもじっているのは明らかですが、ナルニア物語を主体にしつつ「指輪物語」「ゲド戦記」要素を取り込み、さらに「時をかける少女」のエピソードまで取り込むといったストーリィで、それぞれの物語ファンにとってはくすぐられる様な楽しさがあります。
ファンタジー物語とミステリ、どちらが好みに合うかは好み次第だと思いますが、どちらかというと私は前者の方でしたね。
ともあれ、最後は両方の物語が再び一体化し、すべての真相が解き明かされるという展開。

なお、エピローグが見逃せません。きっと驚かされ、またまた楽しくなること、請け合いです。

                 


   

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