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「コーリング・ユー Calling You」 ★★☆ 小説すばる新人賞 | |
2024年02月
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小説すばる新人賞の受賞作と知って読んだのですが、これは読んで正解、実に面白かったです。 シャチと人の交流を描いた海洋ドラマなのですが、少年のシャチであるカイ(後に「セブン」)のキャラクターが魅力。 好奇心旺盛で積極果敢な性格、でも少々腕白気味。そうした少年がいれば魅力的な主人公になる筈ですが、本作においてはそれが人間ではなく、少年シャチなのです。 ロシア海域で家族の群れから遅れをとっていたカイは、シャチの捕獲を請け負っていた水産会社に捕獲されてしまう。そして、カイを助けようと自ら網に飛び込んだ従姉のエルまでもが。 カイはその後、米国のスラットン海洋研究所に送られ、主任研究員イーサン、飼育員ノアらの研究対象として飼われることになります。 その2人へ依頼があったのは、希少な微生物を収めたキャニスターが船の沈没によりベーリング海の底に沈んでおり、海洋動物を使って引き揚げてほしいというもの。 そこからセブンの冒険が始まるのですが、同時にセブンは、クジラの一群から聞いたエルの具合が悪いという知らせに、心配をし始め・・・。 本作の魅力は、シャチであるセブンと、人間であるイーサンたちが対等に描かれていることです。 セブンには、セブンの世界があり、思考があります。それは人間であるイーサンたちと全く変わるところはない。 読者は、シャチの世界と人間の世界の双方を同時に眺める奇跡を味わうことになります。 さらに、コミュニケーション、言語能力が極めて高いセブンが起こした奇跡は・・・・。 ファンタジー物語とサイエンス・サスペンス、その両方の面白さを兼ね備えた海洋小説です。 お薦め! |