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2.飢餓海峡 |
●「故 郷」● ★★★ |
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2004年11月
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いい本でした。大切に読みました。 自分の育った家から都会へ出ていった人、海外で半生を送った人、彼らの胸中にある故郷。一方、その"故郷"で、現実に暮らしている人々の姿。胸中にある"故郷"は思い出の姿であるけれども、現実の故郷は変りつつあります。 この作品は、決して現実批判でも文明評論でもなく、現実にこの現代で暮らす人々の気持ちの奥にあるものを、あるがままに取り出しています、そんな印象を受ける作品です。だからこそ、すっ、と入っていける感じ、素直に読める感じが持てる気がします。 でも、この作品を通じて流れているのは、故郷を求める自然な気持ちです。それらを水上さんは、はるか空の上から温かく見守っているような感じがします。その所為か、本作品は気持ち良い仕上がりとなっています。 |
●「飢餓海峡」● ★★★ |
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新潮文庫刊
1997/11/24 |
今から11年も前に読んだ作品。水上さんの代表作のひとつといって良いと思います。 ストーリィは、青函連絡船洞爺丸沈没に前後する10年前の犯罪に端を発し、男女の心中偽装殺人事件に至る、刑事たちの真犯人探索というミステリー仕立てのものですが、その底辺にあるものは、2人の男と女の哀しい人生です。 現時点で思うなら帚木蓬生作品の先駆となるような作品ですが、水上さん自身の生い立ちを背景に、はるかに苦渋に満ちた人生ドラマによりストーリィは成り立っています。 表面的なストーリィはあくまで探索ミステリーですが、そんな筋立ての中で、受刑者の出所後の更生、貧農の村の生活、という大きな社会問題を掘り下げていく作品です。 ※帚木蓬生ファンの方にお勧めしたい作品です。 |