緑川聖司作品のページ


大阪生。初の単行本「晴れた日は図書館へいこう」が第1回児童文学者協会長編児童文学新人賞の佳作となる。


1.晴れた日は図書館へいこう

2.プールにすむ河童の謎

3.晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語

  


 

1.

●「晴れた日は図書館へいこう」● ★★


晴れた日は図書館へいこう画像

2003年10月
小峰書店刊

(1500円+税)

2013年07月
ポプラ文庫化

  
2004/09/19

 
amazon.co.jp

天気が好いからといって外で遊びたい子どもばかりではない。読みたい本は沢山ある。とても雨の日だけじゃ読みきれない。だから声を大にして言いたい、晴れた日は図書館へいこう!と。

そんなプロローグから始まる児童小説。
主人公は小学校上級生の茅野しおり。母子家庭で母親が日中不在の彼女は、本好きもあって図書館へ行くことが多い。そのしおりが図書館で出会うちょっとミステリアスな出来事を描いたストーリィ。
題名からしてすぐ連想するのは、光原百合「時計を忘れて森へいこう。舞台に高原と図書館という違いがあっても、主人公とその導き手として、深森護、本書ではしおりとしおりの従姉である葉山美弥子という配置はよく似ています。
本書では、それに加えて図書館の利用の仕方とマナー、不明本という図書館の悩みも紹介されていて、子ども達への格好の図書館利用案内書となっているのが嬉しい。

大人が読むとちょっと物足りなさもありますが、本好きな子ども達、またそうでない子ども達にも是非読んでもらいたい本です。

わたしの本/長い旅/ぬれた本のなぞ/消えた本のなぞ/エピローグはプロローグ

 

2.

●「緑川事件簿 プールにすむ河童の謎」● 絵:森友典子 ★★


プールにすむ河童の謎画像


2005年6月
小峰書店刊

(1200円+税)

 

2005/07/23

塾帰りの片桐圭太は、夜遅く緑川小学校の裏手にさしかかった時にプールからの水音に気付きます。振り返った圭太は、プールからぬめぬめとした緑色の皮膚で覆われた化け物が姿を現わすのを目撃する。「河童だ!」と恐怖にかられた圭太は転がるようにして逃げ帰ります。
翌日その事件を聞いて興味をもったのは、緑川小学校・新聞部の島崎ゆかり遠藤恭子。恭子は、ちょうど緑川新聞の「緑川事件簿」コーナーの記事ネタがなくて困っていたところ。
一方、隣町では宝石強盗事件が発生し、恭子が図書館で知り合った米国帰りの転校生・相馬空也は、その事件に興味を示す。

小学生の冒険物語かと思いきや、いつのまにかストーリィは本格的推理小説の様相を来たしています。それを担うのは、理路整然とした推理力を示す空也。
探偵タイプの空也と記者タイプの恭子のコンビに加え、オカルト好きのゆかりと怖がり屋の圭太がテンポの良いやりとりで笑いを誘います。そんな楽しいストーリィ。
児童向け作品といえども、ホームズ役の空也+ワトソン役の恭子に現場調査を踏まえた推理と、推理小説の常道をきちんと踏んだうえで4人の小学生が生き生きとしていて、とても楽しい。

「緑川事件簿」と題名についているからにはシリーズものになるのでしょうか。そうであれば、今後がとても楽しみです。

     

3.

「晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語  ★☆


ここからはじまる物語画像

2013年09月
ポプラ文庫刊
(620円+税)

   

2013/11/25

   

amazon.co.jp

図書館を舞台にした日常ミステリ短篇集、晴れた日は図書館へいこうの第2弾。
舞台は
雲峰市にある市立図書館、主人公は陽山小学校5年生の茅野しおり、そのしおりに毎度貴重なアドバイスを与えるのが図書館職員である従姉の美弥子というペアは前作どおりです。

日常ミステリといってもそこは図書館が主要舞台となっているだけに、謎はいつも本にまつわる出来事。それをしおりを初めとして本好きな人たちが頭を寄せ合い解き明かす、というのが毎度のパターン。
篇を追う毎に、しおりを囲む本好きの人たちの輪が広がっていくというところが本好きにとっては楽しい哉。

そしてもう一つ、本書の隠れた楽しみは、しおりが好きな本、読みたい本として作中で挙げる本の数々。あらすじを聞いただけで如何にも面白く、是非読んでみたいと思うのですが、皆架空の作品の筈。そんな仕掛けも楽しい限りです。
なお、解説は大阪大学ミステリ研究会での一年先輩・後輩という間柄だという光原百合さんが担当。
シリーズ本として、今後の続刊に期待、です。

プロローグ/移動するドッグフードの謎/課題図書/幻の本/空飛ぶ絵本/消えたツリーの雪/エピローグ/番外編−九冊は多すぎる

      


  

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