松田美智子作品のページ


山口県生。フリー・ジャーナリストとして数々の事件取材に携わる傍ら、小説も手がける。

 


   

●「天国のスープ」● ★☆




2007年02月
文芸春秋刊

(1429円+税)

 

2007/03/12

 

amazon.co.jp

人生の一番辛い状況の中に現在置かれている男性主人公、そして女性主人公の2人が、一杯のスープによってもう一度幸せをつかむという心温まるストーリィ。

男性主人公は岡本亮介、30代後半のシェフ。一人息子を不慮の事故で失って以来、妻の美樹との間がうまくいかなくなり、離婚。現在は「スープの店」というスープをメインにした店でオーナーシェフのアシスタントを務めている。
女性主人公は杉村結子、20代半ばの独身で特許事務所勤め。何のためかある味のスープを探して、少ない給料をやり繰りしながらあちこちの店を食べて回っている。
冒頭、ある店の入り口ですれ違った2人が、どこでどのようにして再び交わるのか。そこにどんな幸せが生まれるのか。その点が本書の読み処です。
その2人に共通するのは、紛れもなくスープ!
スープは身体の内から温めてくれ、食物の栄養を最も吸収しやすい形で取り入れることができる。そして消化力の弱い老人や子供にも、そして病人にも優しい料理である、という。

本書はまさに優しく、人の気持ちを芯から温めてくれるストーリィ。スープで温まったせいか、読了後の気分もとても良い。
スープの温かさ+人の心の温かさ、を素敵に味わえる作品です。

 


   

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