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1.敬語で旅する四人の男 2.世話を焼かない四人の女 3.捨て猫のプリンアラモード |
「敬語で旅する四人の男」 ★★ | |
2016年11月
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「世話を焼かない四人の女」を読んだからにはと、似た題名のデビュー作も読んだ次第。 すると、これはこれは・・・・。 本書に登場する4人の男性、何故「敬語で旅する」かというと、さして親しくもない間柄だから。 最初の篇で主人公となるのは真島圭太・29歳。両親が離婚して疎遠となったままの母親に10年ぶりに会いに行かなければならないと、中高で1学年上だった斎木匡・30歳と愚痴ったところ、斎木は誘われたものと思い、佐渡行きを応諾。 いやいや男2人旅ではゲイと誤解されないというと、大学院仲間の繁田樹・33歳をいつの間にか誘い、さらに繁田の飲み仲間である仲杉幸彦・28歳まで同行者に。 各篇、上記4人が絡み合いながら、真島、繁田、仲杉、斎木を語り手(主人公)にして、それぞれの人生ドラマを描くというストーリィ構成。 ・「敬語」は、真島と10年ぶりに会う母親との関係。 ・「犯人はヤス」は、繁田と離婚した妻、息子ヤスとの関係。 ・「即戦クン」は、仲杉と、そのしつこい恋人との関係。 ・「匡」は、斎木が好きになった女性との恋模様。 それぞれの人生ドラマも面白いのですが、本作の個性を際立たせているのは、人間関係が理解できず時々珍妙なやりとりを行うユニークな人物=斎藤匡の存在。 この斉藤匡の存在が、何のかんのと言ってストーリィの鍵になっています。 その斉藤匡の恋愛模様を描いたのが「匡のとおり道」で、その珍妙な恋愛行動には幾度も爆笑、必須です。 ※なお、本作は、「世話を焼かない四人の女」へと繋がっていました。 「匡のとおり道」の舞台は、水元闘子らのいる<彩明ホーム>ですし、会沢ひと美の経営する掃除会社の社員である望月アルエも既に登場しています。 是非、シリーズ化を期待。 敬語で旅する四人の男/犯人はヤス/即戦クンの低空飛行/匡(たすく)のとおり道 |
「世話を焼かない四人の女」 ★★ | |
2022年09月
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題名からするとどんなストーリィなのか? 全く予想がつきませんでしたが、女性たちを主人公にしたお仕事小説、いや生き方小説かな、というところ。 何はともあれ、どんな仕事にしろ女性がやろうとすると、何かと煩く言う人間がいるもの。男性なら言われることはないのに。 そうした中で奮闘する4人の女性を描いた連作ストーリィ。 ・「ありのままの女」:水元闘子、47歳。住宅メーカー<彩明ホーム>で総務部長。反抗的なリーダー=縄井と、障害者枠で採用した個性的な3人の部下に加え、有名大学院卒の武下華美を迎えます。自分らしく生きることの何と難しいことか。 ・「愛想笑いをしない女」:榎本千晴、29歳。元ソフトボール選手で今は宅配ドライバー。女だからと毎回文句をつけてくるクレーマー客、新任所長も嫌味ばかり・・・。 ・「異能の女」:石井日和、29歳。匂いに極度に敏感。おかげで仕事に支障も。現在は町のパン屋でバイト。ドイツパンを焼くことが最近の楽しみ。 ・「普通の女」:夫が若い女と駆け落ちし、夫の家業だった掃除会社を担うことになった会沢ひと美。その苦難の道は・・・。 どの女性も個性的で、各ストーリィは面白さたっぷり。 とくに、水元闘子と会沢ひと美の頑張りは凄い、お見事。そして今は颯爽としていて、すこぶる格好良い。 なお、何故か4篇に共通して登場する人物が一人・・・。 本書読了後、デビュ―作「敬語で旅する四人の男」を読んでみたくなりました。 ありのままの女/愛想笑いをしない女/異能の女/普通の女 |
「捨て猫のプリンアラモード−下町洋食バー高野−」 ★☆ | |
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「捨て猫」はともかく、「プリンアラモード」という題名からは洒落た感じを受けますが、そうした印象とはかけ離れて、本ストーリィの舞台は昭和30年代後半の浅草。 主人公の畠山郷子は、群馬県の田舎から中卒の集団就職で上京した女の子。しかし、就職した工場の労働は過酷で、寮の食事はまるで餌といったもの。2年半で耐えきれず、郷子は寮を脱走。 上野で工場関係者に追われる中、たまたま出会った浮浪者のロクさん、高野バーの女主人=とし子さんに救われます。 工場から支度金を貰っている両親の元に帰れず、ここに居場所を求めるしかないととし子に縋りついて懇願、郷子はデンキブランで評判の洋食バー「高野バー」のウェイトレスとして働き始めます。 その郷子の友人、仲間となるのが、病気で視覚を失った1歳下の女子高生=橋本小巻、駒形にある履き物屋の次男坊で1歳年上の調理師見習い=黒川勝。 東京っ子である小巻、勝の話も交えながら、上京した東京で奮闘する、17歳の郷子の脱走〜自立&成長ストーリィ。 なお、舞台となる「高野バー」、明治13年創業、デンキブランで有名な実在の「神谷バー」がモデル。 以前、ニフティのオフ会で神谷バーに行ったことがありますが、お酒が飲めないのでデンキブランには挑戦しておらず。 用心に小型のバールを持ち歩く等々、郷子のキャラクターが個性的でそれなりに楽しめますが、何故今、集団就職女子の物語なのでしょうか。 また、神谷バーを描くのが目的でもなさそうですし、今一つ釈然としない思いが残ります。 1.カレーライスだから美味しいとは限らない/2.1962年のにんじんグラッセ/3.キョーちゃんの青空/4.捨て猫のプリンアラモード |