「減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心」という印象的な一文から始まるストーリィ。 好きでもないチビチンポの佐野相手に初体験を済ませたことにアイコは自尊心を損ないますが、本当に好きな相手は他に居るのにと後悔しても後の祭り。
その佐野が誘拐されたらしいという騒ぎが発生。一緒にラブホに行ったアイコが怪しいと女の子連中にシメられそうになり、アイコは内心怯えながらもリーダー格の女の子を徹底的にブチのめしてしまいます。
街には、子供3人を切り刻んで虐殺したグルグル魔人が彷徨し、中学生たちはアルマゲドンで大騒ぎ。
アイコはいつの間にか三途の川の向こう側へ引きずり込まれそうになり、さらに魔界天界の森の中で彷徨います。
脈略がよく理解できぬまま、ストーリィは怒涛のように、まるで加速度がついたように突き進んでいきます。読み手はただ一方的に押し流されるばかり。
如何にも現代的、破天荒な女子高校生の物語と見えますが、落ち着いて眺めると、意外と純情なアイコの姿が見えてきます。次には好きな相手とエッチしたいと願い、好きな相手・金田陽治に自分の気持ちを打ち明けられずモジモジしている。
表面的なところはいざ知らず、本心のところはあまり変わっていないということでしょうか。
一人の人間が幾つもの表情を見せることがある。“阿修羅”という題名はそれを象徴したものかと思います。
斬新なスタイルの小説であり、それなりに評価すべき作品でしょうけれど、私の好みにはちと合わず。
なお、主人公は、かつての高校生小説「アイコ十六歳」と同じ名前。その為つい比較して時代の違いを感じてしまうのですが、そこまで舞城さんが意図していたかどうかは判りません。
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