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1.君の名前の横顔 2.愛されてんだと自覚しな |
1. | |
「君の名前の横顔」 ★☆ |
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2024年12月
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父親が死んでから5年、20歳になった牧野楓の家族は、義母である三好愛と異母弟の冬明・10歳の2人だけ。 その冬明、他の小学生たちに比べると少し変わったところがあったが、最近、怪物ジャバウォックに○○を盗まれた、と口にするようになります。 その「ジャバウォック」とは、「鏡の国のアリス」に登場する詩に謳われた怪物。 冬明の言葉の意味は? そして、世界が変化していく・・・。 ミステリか、それともファンタジーなのか?と戸惑いましたが、結局は家族ストーリィ。 それが伝えられるまでに何と遠回りさせられたことか、というのが正直な思い。 ストーリィとしても、ジャバウォックの実像化に成功しているとは思えませんし、楓たち家族の周辺に登場する人物たちも息吹きが感じられず、単に状況のひとつになっているだけ、と感じられます。 着想としては悪くない気もするのですが、それが十分生かされなかった物足りなさと、そもそもストーリィが分り難い、といった処を残念に思います。 プロローグ/1.私は七年ほど牧野として暮らした/2.ガリレオ裁判の真相/3.病の一覧にはないもの/4.その名前に意味はなく、意味がないことには理由がある/5.指輪を差し出した彼と、私は二年後に結婚する/6.アリスと図書館/7.私の心を守る最後の盾/8.名前のないアリス/9.夕空が綺麗なことを思いだした/10.ジャバウォック現象とそのルールの考察/11.五分間の喜びも壊れて/12.ふたつのジャバウォック/13.少年の冒険/14.もう一度この人を殺すということ/15.名前と視点/16.みんな覚えている/17.誰が為の怪物/18.視点と横顔/19.その愛情に名前がなくても/20.バールのようなもの/21.どんな世界でだって/エピローグ |
2. | |
「愛されてんだと自覚しな Don't you know, I love you」 ★★ |
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千年前、ある女が水神からの求愛を袖にして人間の男との愛を選んだため、水神から2人は輪廻転生の呪いをかけられた。 2人は千年の間何度も生まれ変わりますが、常にすれ違いを繰り返すだけ。 具体的にいうと、女は千年の記憶を持って生まれ変わりますが、相手の男を愛した途端に記憶を失う。一方、男は記憶を持たずに生まれ変わりますが、相手の女を愛した途端に過去を思い出す、という具合。ですから永遠に2人の愛は成就しない。 主人公の岡田杏は、生まれ変わりの当事者。でも、運命の相手に出会いたいとはもう思わない、ルームメイトでありバイト先の先輩でもある守橋祥子との生活で充分幸せだから、と。 それにもかかわらず、杏と、依頼により盗みを行う<盗み屋>である祥子は、「徒名草文通録」という古書を巡るドタバタ騒ぎに巻き込まれます。 第一章は、神戸のホテルで人間同士による大騒動。 第二章は、城崎温泉での、人と神が入り乱れての大騒動、という展開。 水神の呪い、男女の永遠に結ばれない愛という設定は、ファンタジー物語の前提と思いきや、実はドタバタ劇の原因というに過ぎませんでした。 一番興味を感じるのは、多数登場する人物のうち、杏の運命的な相手はいったい誰なのか、という点。 結局その答えは、何とまぁ・・・。でも、そこに面白さあり。 本作、何とも人を喰った物語なのです。 ※なお、「愛されてんだと自覚しな」という本作題名は、まさに殺し文句ですね。 Prologue/1.神戸金星台オムニバス/2.城崎徒名草クロニクル/3.愛されてんだと自覚しな/Epilogue |