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1.何度でも君に温かいココアを 2.ラブオールプレー−ラブオールプレーNo.1− 3.風の生まれる場所−ラブオールプレーNo.2− 4.夢をつなぐ風になれ−ラブオールプレーNo.3− 5.君は輝く!−ラブオールプレーNo.4− 6.あざみ野高校女子送球部! 7.ラブオールプレー−勇往邁進−−ラブオールプレーNo.5− |
1. | |
●「何度でも君に温かいココアを」● ★☆ |
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ちと突拍子のないところ、また現代おとぎ話のように感じるところがありますが、母親の隠された過去、しかも恋の秘密を中学生の娘が初めての京都への旅の間に探し求めるというストーリィ設定はミステリアスで、十分魅力的です。 そのうえ母親の悲恋を追う過程で、思いがけなくも自分自身の初恋と出会うという展開は、母親=由希の物語だけでなく娘=佐生倫子の物語であることを明確に示していると言って良く、メリハリが利いていて楽しい。 また、本作品の楽しさは、登場人物たちが相互に相手のことを気遣っているという温かさに負うところ大。その主な相手は過去に辛い経験をした由希に他なりませんが、その延長線上に倫子への温かい視線があることも確かです。 京都で倫子が次々と出会う人々は皆、母親の由希だけでなく倫子のこともよく知っているという風。母親の友人、幼馴染を訪ね歩いていく過程で徐々に母親が秘めていた過去が明らかになっていく展開は、読者をどんどん引っ張っていきます。 途中、もう一人の語り手として登場するのが、由希の大学時代からの友人である恵子の息子=広沢敦志。その敦志と倫子の関わりも嘘みたいですが十分楽しい。 表題の「君に温かいココア」というのは、由希が辛い思いの時にずっと寄り添って彼女を支えた倫子の父親=佐生智の由希に対する行動を象徴するものですが、ココアが温かいのはそこに人と人との繋がり、相手への想いがあるからこそでしょう。 ミステリアスな展開と登場人物たちの温かな眼差しが嬉しい、清新で温かな家族小説です。 |
2. | |
●「ラブオールプレー」● ★★☆ |
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2021年08月
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高校男子バトミントン部を舞台にした、純粋で清新な青春スポーツ小説の傑作! 中学からバトミントンを始めた水嶋亮、自分ではそう飛び抜けた選手ではないと思っていたのですが、バトミントンの名門高校=横浜湊の監督である海老原から直々にスカウトされ、同じくスカウトされた有望選手たちと一緒に横浜湊へ進学します。 そしてそこには、仰ぎ見るような存在、絶対的エースといわれる遊佐賢人が一学年上にいた。 あえてスポーツコースではなく進学コースで入学した亮、亮の相棒志願の榊、帰国子女の松田航輝、強力双子ダブルスの東山ツインズ、名マネージャー役の内田輝ら同期の面々と手を携え、全身全霊でバトミントンに打ち込む高校生活がスタートします。 本作品で特筆すべきなのは、登場人物が皆、純粋な人間ばかりであること。 嫌味な先輩もいなければ、敵対する同期もいませんし、息子の情熱を理解しないといった親もいません。 だからこそ、何処まで読み進んでも気持ち良いストーリィですし、純粋にバトミントンに打ち込むストーリィになっています。 作者の小瀬木さん、本当にバトミントンを愛しているのだなぁ、と感じさせられるくらいです。 横浜湊高校に進学してバトミントン部に入部し、猛練習に明け暮れ、仲間と切磋琢磨しながら強くなっていく亮たちの姿が、一歩一歩着実に描かれていきます。 それだけに、最初から最後まで面白さフル回転、その間全く揺るぎなし。 1頁目から最終頁まで、練習風景も試合風景も、何も変わらず夢中になって面白さを満喫できる作品など、そうあるものではありません。 溌剌とした魅力いっぱいの青春スポーツ小説。 お薦め! |
3. | |
●「風の生まれる場所 ラブオールプレー」● ★★ |
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2021年11月
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高校バドミントン部を舞台にした傑作学園スポーツ小説「ラブオールプレー」の続編。 今回の主人公は、前作の主人公だった水嶋亮の一年先輩、天才的なバド選手の遊佐賢人。 続編といっても、前作以後のストーリィではなく、前作を含んだ高校〜大学と長い期間における遊佐のバドに賭けた戦いを描いたストーリィとなっています。 横浜湊高校の入学案内ポスターのモデルとなっていた水嶋里佳の写真に一目惚れして横浜湊への進学を決意。横川祐介という貴重なバド仲間と出会い、海老原監督の言葉通り1年後、東山ツインズ、水嶋亮、松田航輝、榊翔平、内田輝といった共に戦える相手を得て、横浜湊は一気にインターハイ優勝への道を駆け昇っていく。 そして大学進学、横川とは同じ青翔大。インターハイでの横浜湊連覇を経て1年後、東山ツインズが青翔大に入学してくる一方、水嶋亮は遊佐と真っ向から戦うため早教大へ進学。インカレ等で再び遊佐が水嶋亮との激戦を繰り広げます。 本書冒頭から、前作同様にワクワクする面白さ。 でもその面白さは、前作の延長線上にある面白さに過ぎないのかもしれません。その意味では、視点を水嶋亮から遊佐賢人に変え、旧横浜湊を中心としたバトミントン小説をもう一度見直すという妙味の魅力、前作と対になる作品であろうと思います。 また更に見方を変えると、遊佐と水嶋里佳との出会いから2人の成長した時点までを描いたストーリィと思えるところもあり、微笑ましい次第です。 水嶋亮、横川祐介、彼らにも青春らしい風景が付け加えられていますし。 「ラブオールプレー」と共に、是非楽しんでいただきたい高校スポーツ小説の逸品です。 |
4. | |
「夢をつなぐ風になれ ラブオールプレー」 ★★ |
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2021年11月
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バドミントン部を舞台にした傑作学園スポーツ小説「ラブオールプレー」の第3弾。 これまでの2巻は水嶋亮、遊佐賢人とトッププレイヤーを主人公に据えてきましたが、本巻の主人公は過去どちらかというと名脇役的な存在であった横川祐介。 その横川を語るうえでは必然的なのでしょう、ストーリィは祐介の中学校時代から始まり、彼の家庭事情、様々な人の支援を得て横浜湊高校へ進学、仰ぎ見る選手であった遊佐賢人と運命的な出会いをしてダブルスのペアを組み、青翔大学でもそのコンビは続きます。幼馴染の三上梓とも再会し、同じ大学バド部員となるを経て親公認の恋人関係に至る。 極めて順調な歩みと言えますが、その祐介に訪れた試練は遊佐の身に降って湧いた大きな障害。そこにおいて祐介は、バドに向かう自分の覚悟を質されることとなります。 そしてコートに戻って来た遊佐と共に更なる高みを目指す決心をするというストーリィ。 前半は横浜湊でのワクワクするような興奮を総ざらいするような展開で、ファンとしては楽しい限り。 そのうえで後半は、更なる高みを目指す祐介と遊佐の試練が描かれます。それは2人だけでなく、後に続く水嶋亮にも共通すること。 また、スポーツ小説かつ青春ストーリィらしく、祐介、亮、遊佐のほのぼのとするシーンも添えられています。 さて、ファンとして気になるのは続巻があるのかどうか。これまでのストーリィを収斂する様な面があるためこれで完結かと感じてしまうところがあるのですが、常に道は先に続いているという主人公たちの言葉どおり、本物語もまだまだ続いていくことを期待するばかりです。 |
5. | |
「君は輝く! ラブオールプレー」 ★★ |
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2021年12月
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「ラブオールプレー」第4弾。 今回は、前3作の主要メンバーだった遊佐賢人や水嶋亮、横川祐介らの脇役であったメンバーをそれぞれ主人公にしたサイドストーリィ。 こうして読んでみると、主要な3人以外のバドミントン・プレイヤーたちも充分個性的かつ魅力的であったことが強く感じられます。だからこそ“ラブオールプレー”シリーズ前3作も燦然と輝いていたのでしょう。 彼らたちにもまた、主要3人と同じようにバドミントンを続け、競い合う中でドラマはあったのです! 「チームメイト」は、帰国子女で冷静なプレーヤーである松田航輝が主人公。彼は水嶋亮のことを「マジ、面倒くさい」と語ります。 「天才なんかいないけど」は、横浜湊に感謝しつつ友好関係にある恵那山高校バドミントン部の拓斗と静雄(水嶋亮と中学時代チームメイト、親友)。横浜湊とは違う闘いの様が描かれます。 「ツインズ」は、リトルリーグ野球で全国優勝しながら中学進学後はバドミントンに転向した東山ツインズ(太一&陽次)2人の軌跡を描いた篇。 「今が輝く時」は、九州で天才児と謳われながら遂に遊佐賢人に勝てず、更には水嶋亮にも敗れた後、早教大学では亮のチームメイトかつダブルスの相手方となった岬省吾の挫折と悩みを描いた篇。 面白さは前3作に決して引けを取りません。 チームメイト/天才なんかいないけど/ツインズ/今が輝く時 |
「あざみ野高校女子送球部 Azamino High School Girls Handball Team!」 ★★☆ |
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高校の女子ハンドボール部を舞台にした、青春&部活スポーツストーリィ。 同じく小瀬木さんの、バトミントン競技を題材にした“ラブオールプレー”は大いに楽しませてもらったシリーズですが、既に完結。あの興奮ももう終わりと思っていましたが、本作、あの興奮を彷彿させてくれる面白さです。 主人公は端野(はしの)凛、小学校の頃から中学までずっとバスケ選手。しかし、その卓抜した運動能力故に他から浮き上がり、失望するだけ。高校ではもう二度とチーム競技はやらないと決意していたのですが、凛の運動能力に目を付けた女子送球部顧問の成瀬先生の策略にまんまとひっかかり、送球部に入部。 本作はそこから、勝利するためチームの先輩、同学年生らと厳しい練習に耐えて奮闘しながら、ハンドボール選手として成長していく凛らの姿を描いた青春ストーリィ。 “ラブオールプレー”では多士済々といったチームの顔ぶれが魅力でしたが、本作では(言い過ぎになるかとは思いますが)凛の独壇場といったところ。でも、その抜群に個性的な凛のキャラクターが痛快で、ストーリィを一人で引っ張っているところも、本作に相応しい面白さと感じます。 身長 172cmという体格と卓抜した運動能力の持ち主。そんな自分の能力を卑下せず、たとえ上級生であっても遠慮なく振る舞い、チームワークなど我関せず、といった風。馴れ合いのチームワークより、常に堂々として揺るがないところが、本作主人公である端野凛の際立つ魅力。 生意気だけれど、それ相応の実力を発揮している凛をそれなりに評価している上級生、同級生たちとのやり取りは、結構楽しい。 ストーリィ展開はかなりスピーディで、あっという間です。 しかし、抜群に個性的な端野凛と仲間たちのチーム物語を十分味わえたとはとても言えない状況。もっともっと楽しませて欲しいところです。 スポーツ小説好きの方に、是非お薦め! |
「ラブオールプレー−勇往邁進−」 ★☆ | |
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シリーズ第5弾にして、最終巻とのこと。 とは言っても前の第4弾を読んでから8年余、既に完結済と思っていただけに、少々困惑するところあり。 そのうえ、今さら盛り上がりようもありませんし。 それでもかつて熱中したシリーズの最終巻ともなれば、読まずにはいられません。 本巻での主人公は、横浜湊高校バトミントン部で、水嶋亮らと同期の内田輝(あきら)。 高校見学の時点で、やはり見学に来ていた水嶋が楽しそうに躍動するバド姿を見て入学・入部を決意したところから、卒業してコーチを引き継いだ後の夏合宿風景を描くプロローグ&エピローグ場面まで、輝の3年間が描かれます。 チームに自分が一番貢献できる役割とは何か。それを考えてプレイヤーではなく、“参謀”の道を選んだ内田輝。 そうした内田輝の立場を反映して、これまでの巻で描かれた横浜湊バドミントン部、部員らの躍進していく姿が、“参謀”という視点から、冷静かつ客観的に語られていきます。 それはそれで、当時をもう一度大局的に眺めるようであり、相応に楽しませてもらいました。 それにしても、実に濃く、熱い3年間だったなァと思います。 プロローグ/1.出会いは突然に/2.入学、そして入部/3.夢を見るのもつかむのも、そのために努力をするのも自分自身/4.塵も積もれば山となる/5.助走/6.バトンをつなぐということ/7.連覇の厳しさ/8.絆/9.リーダーであること/10.守りには入らない/11.夏合宿、イン野沢温泉 |