小林エリカ作品のページ


1978年東京都生、作家・マンガ家。2014年「マダム・キュリーと朝食を」にて第27回三島由紀夫賞・第151回芥川賞にノミネート。


1.彼女は鏡の中を覗きこむ

2.最後の挨拶

 


                   

1.

「彼女は鏡の中を覗きこむ ★★


彼女は鏡の中を覗きこむ

2017年04月
集英社刊

(1300円+税)



2017/04/25



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僅か 120頁余りという薄い一冊の中に4篇を収録。
それでも中々にインパクトのある一冊でした。

戦後日本と近未来、その時間で人間が記した足跡を一気に書き示した4篇から構成される短篇集、という印象。
個々の人間ドラマが霞んでいったその向こうには、人間が歩んだ“発展”という歴史の虚ろさが浮かび上がってくるように感じます。

「SUNRISE 日出ずる」:広島・長崎の原爆投下から2年後に生まれた主人公が68歳で死すまで、ビキニ環礁での原爆実験、原子力発電所の初建設、東日本大震災での福島原発事故という原子力の歴史を僅か5頁で描いた篇。
「宝石」:亡き祖母が遺した宝石を大事にしている老母と4姉妹が温泉に行く話。やはり祖母が遺した宝石を身に着けた孫娘の一人が、祖母の体験を夢に見るという篇。
「シー」:近未来、特殊な薬によって男性と海へ行くという疑似体験。
「燃える本の話」:木がなくなり、その結果紙の本も消え失せた近未来。博物館には偶然発見された上下本2冊が展示されているのですが・・・。

SUNRISE 日出ずる/宝石/シー/燃える本の話

                 

2.
「最後の挨拶 His Last Bow ★★


最後の挨拶

2021年07月
講談社

(1600円+税)



2021/07/28



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何となく面白みを感じるし、惹かれるところもあるのですが、とはいえ何を主眼としたストーリィだったのだろうか余り理解できず、という中編小説2篇。

「最後の挨拶」は、シャーロック・ホームズ絡み。
ホームズ全集の翻訳を手掛ける両親と、その娘4人による家族物語。
主軸となるのは父親。陸軍軍医だった祖父にしたがい家族でハルピンへ。そこで10歳までしか生きられないと言われたものの、家族で帰国、戦時中を生き延び、戦後は、2人の娘をもった妻と離婚し、再婚した妻と一緒に翻訳業。
コナン・ドイル、シャーロック・ホームズのことが縁深く、併せて語られます。

「交霊」は、ある霊が主人公。
生前も死後も孤独なまま。誰かと通じたいと思い、霊媒師の交霊会、日本で発明された<交霊機>に期待するのですが、誰とも繋がることはできず。
しかし、最後やっと・・・・ですが、何だったんでしょうね。
 ※ここにも
キュリー夫人、登場します。

小林エリカ作品、もう少し読んでみたいと思います。


最後の挨拶 His Last Bow/交霊

         


   

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