北森 鴻
(きたもり・こう)作品のページ


1961年山口県生。本名:新道研治。鮎川哲也編集の公募アンソロジー「本格推理」への参画を経て、95年「狂乱廿四孝」にて第6回鮎川哲也賞を受賞し作家デビュー。98年「花の下にて春死なむ」にて第52回日本推理作家協会賞を受賞。2010年01月死去。

  


 

●「ぶぶ漬け伝説の謎」● 




2006年04月
光文社刊

(1400円+税)

2009年08月
光文社文庫化

   

2006/07/15

副題は「裏京都ミステリー」
いい加減に帰れという京風遠まわしな言い方として有名な“ぶぶ漬け”と“裏京都”という言葉に観光的な面白味を感じて買って読んだのですが、率直に言って期待外れ。
ストーリィへの飾りつけとして京都らしい料理が登場する点は楽しいところですが、登場人物、ミステリのストーリィ共々に表題「裏京都」以上にマイナーという印象で、物足りず。
とくに登場人物のマイナーぶりは相当なものです。これではなぁ魅力を感じませんわ。

主人公の有馬次郎は、嵐山近くにある山寺・大悲閣の寺男。以前は関西一円で有名な窃盗犯だったらしいのですが、今は気質。でも時々昔の表情を覗かせることがあるようです。
この大悲閣、渡月橋から距離にして200m程度で京都の街を一望するパノラマが楽しめる場所なのですが、山道を歩くこと20分、その後さらに 200段の石段を登らなくてはならないとあって、観光客も滅多に寄り付かないという貧乏寺。
主人公に加え、大悲閣の居候となっているマイナー作家崩れのオチャラケ・水森堅、マイナーな零細新聞・みやこ新聞文化部記者の折原けいという3人が主要な登場人物。
なんだかんだと水森、折原に引きずり込まれるように主人公は事件に巻き込まれ、その都度「山を下りて」事件解決に尽力する、という連作短篇風ストーリィ。
「山を下りて」なんて、TV時代劇で最後に主人公が悪役を斬り捨てに出動する、そんな風ではないですか。
それ程の事件ではないと思うんだなァ。
謎が解明された後、ちっとも爽快感が残らないところが物足りない。また、折角の「裏京都」を案内してもらえたのか誤魔化されたのか、判然としないところが物足りなさの主因。

狐狸夢/ぶぶ漬け伝説の謎/悪縁断ち/冬の刺客/興ざめた馬を見よ/白味噌伝説の謎
 ※京都でいう「ぶぶ漬け」とはお茶漬けのこと。

 


  

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