北林 優作品のページ


1955年沖縄県生、徳島大学薬学部卒。現在、沖縄在住、3児の母。沖縄県立病院勤務を経て、2000年「0と1の間」(沖縄県警鑑識課が舞台)にて作家デビュー。

 


 

●「アブラムスの夜 

  

 
2002年6月
徳間書店刊
(1900円+税)

 

2002/09/13

主人公は、警視庁鑑識課の第一現場鑑識係・松原唯。若い女性ながら、六班の係長を勤める警部です。
本書は、珍しく現場鑑識に重点を置いた警察ミステリ。ディーヴァー「ボーン・コレクターのような徹底した現場鑑識第一主義ということはありませんが、鑑識結果を積上げていくという、手堅い重厚さを感じる作品です。
ただその反面、重苦しく、楽しさが感じられない。硬過ぎ、流れがもうひとつ、という印象があります。
理由のひとつは、松原唯はじめ、登場人物がいずれも陰をもっていること。松原唯が主人公と言っても、ストーリィは展開に応じて主要な登場人物それぞれの第一人称で語られる部分が多いのですが、彼らの陰がそのまま作品全体に陰を落としている気がします。また、文章に「鑑識」とか厳しい漢字が多いことも、もうひとつの理由。
ミステリとしては、加害者の犯行の様子が度々挿入され、その点でも「ボーン・コレクター」と共通する部分があります。ただ、同じ犯人像が一貫せず、読み手としては戸惑いを覚えるほど複雑。しかし、その割に真相は単純で、ちょっと拍子抜け。
本筋事件以外に、松原唯の両親の死にまつわる謎とか、他の複線も描かれているのですが、余計なストーリィ、余計な登場人物が多過ぎると感じます。
面白く読むにはちとシンドイ一冊。ちなみに「アブラムス」とは蝙蝠のこと。

 


  

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