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「迷子の龍は夜明けを待ちわびる」 ★★ 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 | |
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アパートの部屋でヒキコモリ生活を送っていた天空族のセイジの元を榊と名乗る老人が訪ねてきます。 仕えている主人が死期間近にあり、その主人のため、先に亡くなった天空族の妻が天空語で書き残したその日記を読んであげてほしい、という依頼。 その屋敷に赴いたセイジは、その敷地内でユッカという謎めいた少年と、龍に出会います。 そしてセイジは、そのユッカという少年が、40年前に神隠しにあった老主人と若い妻との間の息子、当時8歳と気づきます。 ファンタジーというと“冒険小説”であることが多いのですが、本作は異なります。 死期間近の父親と、今は幽霊となっているユッカとの間を仲立ちする物語であると同時に、もはや数少ない天空族の女性であるセイジにとってのこれからの生き方を選ぶストーリィになっています。 その中で、龍とは如何なる存在か。そしてまた、ユッカの母であるローレルが怖れた「アレ」とは何なのか。 さらに龍とは、セイジを傷つける存在なのか、それともセイジに寄り添う存在なのか・・・。 山、セイジ、龍、ユッカ、植物・・・本来交わることにないものが交わる、そこに清涼さを感じるのは私だけでしょうか。 ストーリィとしては粗削りなところがありますが、何となく気持ち良い、安らかな気分になれる作品です。 龍とセイジのコンビ、本作に続編があるのかどうかは分りませんが、新たな始まりを感じさせられて嬉しい。 |