桐生典子作品のページ


1956年新潟県生、青山学院大学仏文科卒。96年「わたしのからだ」にて作家デビュー。

 


   

●「金色の雨がふる」● 




2006年5月
光文社刊

(1700円+税)

 

2006/07/09

率直に言ってこの手の小説は苦手である、好きでないと言って良い。
理性や心情というものを越えて情念だけで突っ走ってしまうストーリィには辟易してしまう。
本書は2つの時代を超えて、2組の男女の運命的な出会いを描いた物語ということでしたけれど、ファンタジーや気持ちの良いラブ・ストーリィには縁遠い作品です。

離婚して一人暮らしの主人公・山口奈生子は現在42歳の会社員。偶然出会った7歳年下の桧山道雄の強引さに戸惑いながらも同時に惹きつけられて恋人関係に至る。
その奈生子は子供の頃父親の事業失敗から伯父の家に預けられ、孤独な思いを味わったことがトラウマになっている。その頃一人逃げ込んだ神社で奈生子はアヤという女性の幽霊に会ったことがある。アヤとは、昔銅山で賑わっていたその町で芸者をしていた女性のこと。
奈生子と道雄の男女関係が中心となって進行するストーリィの合間に、アヤと恋人・清人の悲劇的な恋愛関係が並行して描かれます。
各々が孤独な生い立ちを背負った同士。そんな恋人同士が最後までお互いを信じきれるか、裏切ることなくその信頼に応えられるか、ということが本書のテーマ。
言うは易し、行うは難し。私にとって本ストーリィは苦味ばかりが残ります。

 


   

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