剣持鷹士作品のページ


1962年鹿児島県生、九州大学法学部卒。現在弁護士。93年「競作・五十円玉二十枚の謎」の公募企画で最優秀賞を、94年「あきらめのよい相談者」にて第1回創元推理短編賞を受賞。

  


 

●「あきらめのよい相談者」● ★☆




1995年10月
東京創元社刊

2005年8月
創元推理文庫

(640円+税)

 

2005/12/18

表題作の「あきらめのよい相談者」は、第1回創元推理短編賞を受賞した作品とのこと。
著者の剣持さんは現役の弁護士とのことで、本短篇集はその経験を活かしたストーリィになっています。

主人公は福岡のイソ弁・剣持鷹士(藤堂法律事務所に勤務)。
極めて優秀ということでもなさそうだが、まぁそこそこに良心的で、ごくフツーの若手弁護士と言えるでしょう。
本書は、その剣持弁護士のところに持ち込まれる奇妙な依頼事にまつわるストーリィ。
自分のところに来た依頼事に疑問を感じた剣持が、その謎解きを依頼するのは友人のコーキ(女王光輝)
日常生活の中に垣間見える異常な出来事を、すっと論理的に解明してしまう才能の持ち主だという。
そんな才能の持ち主であるコーキが、司法試験合格に主人公より遅れをとり、未だ塾でバイト中というところが面白い。

4篇とも驚くような謎解きがある訳でなく、本書の面白味はむしろ弁護士の日常的仕事の様を描き出しているところにあると思います。
怪しげな依頼人を警戒したり、依頼人に不信感をもったり、つまらない相談ばかり持ち込む依頼人に辟易したりと。
「あきらめのよい相談者」は真相にちとこじつけを感じてしまいますが、鮮やかさがあるのも間違いないところ。
「詳し過ぎる陳述書」はいくらなんでも見落とし過ぎだよぉと思えますが、法廷場面はちょっと見応えあり。
書き下ろしの「あきらめの悪い相談者」が、私には一番読み応えがありました。途中からそんな感じは受けていたものの、真相が明らかにされると納得できます。
結局は、剣持弁護士の仕事振りが一番楽しめました。

あきらめのよい相談者/規則正しいエレベーター/詳し過ぎる陳述書/あきらめの悪い相談者

 


  

to Top Page     to 国内作家 Index