|
|
「マイスモールランド Welate min e bicuk」 -★★- | |
|
第72回ベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞・特別表彰を受けた映画「マイスモールランド」、その川和田監督自身によるノベライズ。 当然ながらストーリィは映画と同内容ですが、小説ということで映画では分からなかった細かい部分が描かれている、と言って良いでしょう。 その代表例が小説冒頭。トルコの南、シリアに近い村でずっと暮らしてきた主人公サーリャは、5歳の時何も分からないまま母親ファトマに連れられて村を出て、イスタンブールで父親マズルムと再会、そのまま飛行機に乗って日本にやってきた、という経緯が語られます。 そのサーリャ、トルコ語で暮らしてきて、クルド語は分からず。 小学校1年に転入された後は、日本語が分からず男子小学生たちからイジメに遭うことも多く、苦労したこと。 妹アーリンは中一、弟ロビンは小一で、二人とも日本に来てから生まれたため、トルコ語は全く分からず、という具合。 その後は、コンビニのバイト仲間である聡太との淡い恋、難民申請が不許可となり、父親の入管収容と、映画と同じにストーリィは進みます。 改めて感じることは、 クルド人であることを守ろうとする父親の思い、クルドの流儀を押し付けられることへのサーリャの反発、両方ともよく分かります。 そしてずっと日本で働き暮らしてきたにもかかわらず、長い年数の経過後に難民申請不許可というやり方には、非道なものを感じざるを得ません。 日本の行政組織としては当然、常識ということなのかもしれませんが、国際的な良識に立った処遇への変更を心から願います。 ※映画と小説、両方の作品を味わって貰えると嬉しいです。 |