川島 誠
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1956年東京都生、鎌倉育ち、京都大学文学部アメリカ文学科卒。83年短篇「幸福とは撃ち終ったばかりのまだ熱い銃」を発表。85年同作を含む「電話がなっている」を刊行。以後作品多数。

  


        

「スタート・イン・ライフ ★★


スタート・イン・ライフ画像

2013年10月
双葉社刊

(1800円+税)

  

2013/12/01

    

amazon.co.jp

デカスロン(陸上十種競技)でアジア記録を有し“アジアの帝王”と異名を取る父親=佐橋博信。その父親が選手発掘のためアフリカへ赴いている間に主人公=継生18歳は、父親のコピーになることを辞め、通っている東京体育大学に休学届けを出す。
てっきりスポーツ系ストーリィかと思っていたのですが、展開はまるで違います。スポーツ専念少年を止めた主人公が初めて味わう世間の荒波、いや不可解な猥雑さを体験する姿を描いたストーリィ。

バイトも初経験、友人に紹介された同年代の女子とはすぐセックス、さらに新規事業の共同経営者にならないかと持ちかけられたばかりか、その相手の人妻ともセックス。
さらに、父親がアフリカでスカウトしたという選手を迎え入れたところ、実は訳有り女性という次第。
スポーツエリートという閉ざされた安全な部屋から一歩外へ踏み出した途端、暴風雨に巻き込まれたという様相です。外の世界には剣呑なことも、悲劇もあるということでしょうか。

ストーリィだけを追っていると、主人公の主体性の無さ、成り行きにただ流されるばかりの姿に不満を感じる向きもあるかもしれませんが、まだまだ青春彷徨前のストーリィ。そんな姿でもいいじゃないかと思います。スタートはこれからなのですから。
読み終えて初めて、本書題名の意味が得心いきました。

百メートル/走り幅跳び/砲丸投げ/走り高跳び/四百メートル/百十メートルハードル/円盤投げ/棒高跳び/ヤリ投げ/千五百メートル

  


  

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