片島麦子作品のページ


1972年広島県生、現在広島県廿日市市在住。第28回大阪女性文芸賞佳作、第4回パピルス新人賞特別賞等を経て、デビュー作となる「中指の魔法」にてワルプルギス賞を受賞。


1.銀杏アパート 

2.ギプス 

 


           

1.
「銀杏(ぎんこう)アパート」 ★☆


銀杏アパート

2016年04月
ポプラ社
(1500円+税)

2018年04月
ポプラ文庫



2016/05/01



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大きな銀杏の樹と対であるかのように建つ古びたアパート、「銀杏アパート」
そんな古いアパートに若い女性たちが何故住んでいるのかと言えば、いずれも訳有りだから。
そんな銀杏アパートを舞台にした、住人たちの連作式群像ストーリィ。

集合住宅という舞台設定は割りとよくあるものですし、6篇の中にもよくあるというストーリィがありますけど、一方でキラリと光るストーリィもある、という印象。
なお、本書は連作短編であると同時に、各篇が共通してチサという一人少女の成長していく姿を視野に捉えています。
住民たちが互いに絡み合う展開とチサの成長ストーリィが読み手の心に優しく届き、快い。
片島さんの今後の活躍に期待したい処です。

「キイロイセカイ」:何故か短期間の予定で引っ越してきた女子大生、上の階に住む小学生のチサに親しまれますが、彼女が気付いたものは?
「タラちゃん」:デパートに勤めるスズ、恋人となったハルトはDV男。それなのに何故従ってしまうのか。
「迷エル羊」:養護教諭の水海、彼女が抱えている重荷は?
「ミグルミ」:人とコミュニケーションをうまく取れないが、動物とはとれる女子大生の菜音、状況に好転はあるのか。
「青イバラ」:輸入雑貨店で雇われ店長を務める三枝古都子は独身、40過ぎ。変わらずにいる自分に自信が持てず。
「百ノハナ、千のスナ」:気持良い読後感をもたらす篇。

キイロイセカイ/タラちゃん/迷エル子羊/ミグルミ/青イバラ/百ノハナ、千ノスナ

               

2.
「ギプス GIPS ★★


ギプス

2025年08月
角川書店

(1800円+税)



2025/09/02



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ギプスって、あのギプスですよね。それが題名になるってどんなストーリー?と思ったのですが、その意味は心に嵌めてしまったギプス、自分の心をがんじがらめにしていた、ということのようです。

主人公の
間宮朔子はブックカフェの契約社員で、27歳、独身、一人暮らし。
その朔子の職場に突然押しかけて来たのが、朔子が中学時代に友人だった
葛原あさひの姉だと名乗る葛原鳴海
鳴海、あさひがいなくなった、ついては一緒に探して欲しい、と一方的な要求。いったい何があったのか?

ストーリーは
「朔子」という章と「少女」という章が交互に繰り返されます。「朔子」は現在、そして「少女」は朔子とあさひの中二時が描かれます。
朔子、ちょっと頑なな処がある女性、といった印象です。
本来の性格なのか、葛原あさひと何か関係があるのか・・・。
そこから、「少女」の章にて、朔子とあさひの思いがすれ違ってしまい、その結果二人の道は分かれてしまう。

でも、それから13年間、互いに相手のことを忘れたことはない。
二人は再び相まみえることはできるのか、もう一度やり直すことはできるのか。

行き違いで気持ちがすれ違ってしまう、ということはありうることです。でも再度やり直すことができるかと言えば、それはお互いの気持ち次第なのでしょう。
その障害になるとしたら、心に嵌めてしまったギプス、ということでしょうか。そのギプスを自分で外せるかどうか・・・。

間違っていたと思ったらやり直す、心にはそうした柔軟性があって欲しい。 最終場面には心を洗われる気がします。


朔子/少女/朔子/少女/朔子/少女/朔子

            


   

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