岩瀬成子(じょうこ)作品のページ No.2



11.地図を広げて

12.もうひとつの曲がり角 

13.真昼のユウレイたち 

【作家歴】、朝はだんだん見えてくる、「うそじゃないよ」と谷川くんはいった、ステゴザウルス、そのぬくもりはきえない、オール・マイ・ラヴィング、まつりちゃん、だれにもいえない、くもりときどき晴レル、きみは知らないほうがいい、マルの背中

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11.
「地図を広げて ★★


地図を広げて

2018年07月
偕成社刊

(1500円+税)



2018/12/15



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4年前に母親は弟のを連れて家を出て行き、そのまま両親は離婚。鈴は父親と、弟の圭は母親と暮らし、それ以来離れ離れ。
しかし、母親が職場で倒れそのまま死去してしまったことから、もうすぐ小3の圭は、かつての家とは違う父親と
が暮らすマンションに同居することになります。

かつては一緒に育ち、一緒に遊んだ弟とはいえ、4年も離れていたことは大きい。家にやって来た圭は、ずっと丁寧な口の利き方を通し、どこか他人行儀。
だからといって叱りつける訳にもいかず、ただ見守っていくしかない。
その圭、町の地図を欲しがり、与えると毎日自転車であちこちへと出掛けている風・・・。

4年の間、他人として連絡を取り合うことも殆どなかったのですから、元の形に戻るだけ、という簡単なことではないことを、鈴と圭の姿から感じさせられます。
ただ、無理に圭を馴染ませようとせず、徐々に近づこうとしていた鈴の気持ちに、弟を大切に思う姉の温かさを感じます。
やがて鈴が気付いたことは、圭には4年間にわたる母親と二人だけの暮らし、大切な思い出がある、ということ。
そうした圭の思い出に鈴が近づこうと行動したところから、二人の距離が縮まっていく。

新たな家族を再び作っていく過程を、優しく包み込むように綴ったストーリィ。
2人のそうした時間がとても愛おしく感じられます。

              

12.
「もうひとつの曲がり角」(挿画:酒井駒子) ★★☆   坪田譲治文学賞


もうひとつの曲がり角

2019年09月
講談社

(1400円+税)



2019/11/02



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畠山朋(とも)は小学五年生。
両親が中古住宅を購入したことから、市の東側にあるそれまでのマンションから西側に引っ越し。進学した兄の晴太は新しい中学校へ、朋は新学期から地元の小学校に転校します。
それと同時に朋は、母の勧めで英会話スクールに通うようになるのですが、もうひとつ乗り気になれない。

ある日英会話スクールに行くと、自分が忘れていたのかお休み。折角ここまできたのだからと朋は、英会話スクールの入居ビル近くにある曲がり角をまがって新しい道へ入り込んでみます。
するとそこで朋は、「喫茶ダンサー」という店の店の庭で朗読をしているおばあさん=
オワリさんと知り合います。

別の日、英会話スクールをさぼって同じ道に入ると、店が沢山あるものの喫茶ダンサーは何故か見つからず。でもその代わり、朋は
みっちゃんという同じ年頃の女の子と出会い、友だちになります。
それから朋は、何度も英会話スクールをさぼり、曲がり角の道に入り込んではオワリさんやみっちゃんと親しく交わるのですが。

サボリはいずれバレるもの。朋だけでなく、春太も野球部を辞めると突然言い出し、母親とひと悶着。おまけに両親の間もこのところギクシャクしてばかり。

曲がり角をまがった先での解放感と比較して、家での、母親からのプレッシャーは息苦しい。
今はつまらなくても我慢、努力を積み重ねていけば、将来きっと役に立つ。やればできるんだから、他の子も皆頑張っている、という母親の言葉は確かに正論でしょう。
そういう母親の子供たちに対する愛情も判ります。
でも、そればかり押し付けられたら、今は楽しくなくてもどうでもいいんだというような言い方をされたら、息苦しいばかり。
必然的に、朋の家族の間には亀裂が生じます。
そこから皆が救われるためには、どうすればいい・・・・。

本作で描かれる展開は、どこの家族でも陥りやすい状況ではないかと思います。そんな時、ふと曲がり角をまがってみれば、別の世界があることに気付くのではないでしょうか。
本作に描かれる“曲がり角”は、その象徴と思います。

曲がり角の先にある世界、そこでの朋とオワリさん、みっちゃんとの交流が、ファンタジー的な美しさと楽しさを感じさせてくれます。

岩瀬成子作品、やはり素晴らしい。また、酒井駒子さんの挿画も魅力的です。お薦め。

                        

13.
「真昼のユウレイたち(絵:芦野公平) ★★


真昼のユウレイたち

2023年06月
偕成社

(1400円+税)



2024/01/28



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幽霊というと、現れるのは丑三つ時、そして禍々しいもの、という先入観があるのですが、本作に登場するユウレイたちは全く異なります。
何しろ、真昼に現れるのですから。そう聞いただけで、明るいイメージが浮かびます。

本作に登場するユウレイたち、まるで普通の人のように現れ、子どもたちに親しんだり、寄り添ったり、等々。
登場人物とユウレイとの間には、温かく、そして心の通い合う関係があることが、読み手の胸の中にも温かく伝わってきます。

好いですよねぇ。ユウレイって、嬉しい存在なのかもしれない、とつい思ってしまいます。

「海の子」:小五の春海、幼馴染みの浜男に請われてその大おばさんである海さんの家にいくと、そこには波ちゃんという女の子がいて・・・。
「対決」:小六のかすみ、仲の良い千可が新しいクラスでイジメられているのを知り何とか助けてあげたいと思います。
しかし、その千可ちゃんには支えてくれる存在がいて・・・。
「願い」:小五の春生、友達を探しているらしい米国人青年ダンと知り合います。そのダン、何と祖母の庭子と知り合い?
「舟の部屋」親同士の再婚によって弟となった連くん、何か隠していることがあるらしく、夜中にゴソゴソ。いったい何?

海の子/対決/願い/舟の部屋

       

岩瀬成子作品のページ No.1

    


   

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