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「ミュゲ書房 Muguet Books」 ★★☆ | |
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これは面白い、楽しい! 本好きにとって、この種の面白さは堪えられないものです。 幾ら何でも都合よく行き過ぎ、ということは否定できませんが、良いじゃないですかそれで。読んで楽しい、それこそ読書の喜びなのですから。 主人公の宮本章は29歳、最大手出版社である丸山出版で編集者。しかし、<ソクサク>サイトで注目した新人作家=広川蒼汰を世に出そうと奮闘しますが、上司である編集長との板挟みとなり、結局デビューさせること叶わず。 失意の余り退職した章は、祖父の死去に伴い、北海道A市で祖父が営んでいた書店“ミュゲ書房”を引き継ぐことになります。 大正期の洋館を改装した個性的な書店。でも採算は厳しい。 祖父の手伝いをしていたという個性的な面々、無類の読書家である女子高校生の永瀬桃、店の一部で定期的にカフェをやらせてもらっていたという大学生の池田くん、庭の手入れを手伝っていたという中年女性の菅沼さんという応援を受け、とりあえず店を再開。 すると、ミュゲ書店支援のため、副市長の山田が自伝を刊行したい、A市再生プロジェクトに関わった佐伯市長等々共著の刊行を手伝ってほしいという話が持ちこまれ、章は再び編集者の仕事に復帰することになります。 つまり、ミュゲ書房は書店であると同時に出版社に。 とはいえ、そこからが前途多難。そして、今なお罪悪感を抱えたままの章の前に、再び広川蒼汰が・・・。 挫折、失意から信頼できる仲間を得られて再挑戦。しかし、そこに妨害。それに対してリベンジ。 名作を勧める喜び、喜んでもらえる快感。全力を挙げて本を作り上げ、そして売る(苦労もありますが)ことの達成感。 書店主であると同時に出版社の経営者であり編集者。 本に関わる全てがこのストーリィの中にあります。 お薦め! ※なお、書店の名である「ミュゲ」とはスズランのこと。 花言葉は「再び幸せが訪れる」。 第1章/第2章/第3章/第4章/エピローグ |