「世界の果ての魔女学校」という名前、いかにもファンタジー風ですが、決して「ハリー・ポッター」のホグワーツ魔法学校のような楽しい処ではありません。むしろ本書、見方によっては凄く怖ろしい面もあるストーリィなのです。
本書は、「世界の果ての魔女学校」の生徒(つまり魔女になるための)となった4人の少女の物語。
何故4人は「世界の果ての魔女学校」の生徒となったのか。
4人とも周囲から疎外され苦しんできた、という理由があるのです。そんな少女たちの心の隙を魔女たちは狙っている、即座に近寄り彼女たちを籠絡してこの「世界の果ての魔女学校」に連れてくる、魔女にするために・・・。
そして各章で主人公となる4人は、いずれも魔女の素質を多分に備えている少女たち、というのが本物語の基本設定。
だからといって、彼女たちが皆魔女になるために勉強に励んでいる、ということにはなりません。そこは各人各様、どのようなステップを踏むのか、どのような魔女になるのか、それは結局彼女たちの気持ち次第なのです。
だからこそ4つの魔女物語といっても、それぞれ主人公像、ストーリィ趣向は全く異なります。その多様性が何と言っても素晴らしい。
・ピーターパンのネバーランドへ行くつもりだったのに、曲がり角で右左を間違えてしまった結果「世界の果ての魔女学校」に行き着いてしまった「アンの物語」。
・ボーイフレンドの、前の彼女との光景がいつも目に浮かんでしまい苦しむ「ジゼルの物語」。
・古書店でアルバイトをしているアリーシアの前に現れたのは、彼女が苦手な同級生の男の子。その2人が古書店の謎を知ろうとする「アリーシアの物語」。
・村の子供たちの手で生贄にされた「シボーンの物語」。
どの篇も、出だしのストーリィとは全く異なるストーリィへと途中から変化してしまうところが、まるで魔法のように怖ろしくもあり、深い魅力もあり、といった作品に仕上がっています。
児童だけでなく大人が読んでも傑作といいたい、魔法物語。
お薦めです。
アンの物語/ジゼルの物語/アリーシアの物語/シボーンの物語
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