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13.フィッシュストーリー 14.絆のはなし 15.ゴールデンスランバー 16.モダンタイムス 17.あるキング 18.SOSの猿 19.オー!ファーザー 20.バイバイ、ブラックバード |
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マリアビートル、3652、仙台ぐらし、PK、夜の国のクーパー、残り全部バケーション、ガソリン生活、死神の浮力、首折り男のための協奏曲、アイネクライネナハトムジーク |
キャプテンサンダーボルト、火星に住むつもりかい?、ジャイロスコープ、陽気なギャングは三つ数えろ、サブマリン、AX、ホワイトラビット、クリスマスを探偵と、フーガはユーガ、シーソーモンスター |
クジラアタマの王様、逆ソクラテス、ペッパーズ・ゴースト、マイクロスパイ・アンサンブル、777 |
●「終末のフール」● ★★ |
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2009年06月
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来るべき終末まで残す時間あまりない中で、着実に生きようとする人々の姿を描いた連作ストーリィ。
心憎い小説を書く人なんだよなぁ、伊坂さんは。
舞台は仙台市北部の丘に作られた団地、ヒルズタウン。 もし自分がそんな状況に置かれたらどうだろうか。 終末のフール/太陽のシール/籠城のビール/冬眠のガール/鋼鉄のウール/天体のヨール/演劇のオール/深海のボール |
●「陽気なギャングの日常と襲撃」● ★ |
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2009年08月 2006/06/12 |
「陽気なギャングが地球を回す」の続編。 最初は例の4人が代わる代わる主人公となる短篇集として書き始められたそうなのですが、途中で伊坂さんの気が変わり長編となり、4短篇はプロローグ部分の第一章として長編の中に取り込まれたとのこと。 「地球を回す」の魅力は、銀行強盗4人(成瀬+響野+久遠+雪子)各々のキャラクターの面白さと、4人の間のやりとりの面白さにあったのですが、続編となると流石にもう斬新さは感じられません。また、今回は誘拐事件に巻き込まれるといっても所詮他人事にお節介の手を出すようなもので、前回のようなサスペンス性はまるで無い。 私としてはむしろ短篇部分の方が面白かったです。 |
●「フィッシュストーリー」● ★★ |
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2009年12月
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題名の“フィッシュストーリー”とは、釣り師が自分の釣果を実際より誇張して言いがちなところに由来し、ホラ話のことを言うらしい。
まず「動物園のエンジン」、辞職した後の今も檻の前に寝転ぶ元職員にまつわる話。彼がいると動物たちの雰囲気がまるで違う、それ故に“エンジン”なのだという。その人物の奇妙な行動の理由は何か。その真相が笑えます。 どこへどう行くのか判らない話ばかりかなぁ、この中篇集は? いつも程は面白くないナァと思い始めたところで、次の「フィッシュストーリー」が実に面白かった。 4篇とも、出だしの雰囲気から全く予想もつかない結末に至るところに面白さがあるのですが、これってホラ話的な面白さ? 動物園のエンジン/サクリファイス/フィッシュストーリー/ポテチ |
●「絆のはなし」(斉藤和義・共著)● ★★ |
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作家である伊坂さんが短篇小説を書き、ミュージシャンである斉藤さんが詞と曲を作る、という世にも稀なコラボレーション。 そこから生まれたのが本書、2人の対談+etc。 元々伊坂さんは斉藤さんのファンで、会社員をしながら小説を書いていた伊坂さんが会社を辞めて執筆に専念しようと決心したというきっかけが、斉藤さんの“幸福な朝食 退屈な夕食”という曲だったそうです。 伊坂ファンとしては、小説からは伺えない、普段着の伊坂さんに触れることのできることが何といっても楽しい。 ※伊坂さんの短篇小説は「アイネクライネ」、斉藤さんの曲は“ベリーベリーストロング〜アイネクライネ〜”。短篇小説付きシングルCDという形で発売され、業界内外で話題になったとのこと。 1.対談−歩いて話そうPart1(07.02.26),Part2(07.08.22) ※斉藤和義・・・1966年栃木県生まれのミュージシャン |
●「ゴールデンスランバー」● ★★★ 本屋大賞 |
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2010年12月
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本当に上手いっ! やはり伊坂幸太郎、只者ではないっ。 これまで以上に夢中になって頁を繰らずにはいられなかった作品です。 仙台で行なわれた金田新首相のパレード。そこに突然飛来してきたラジコンヘリの爆発によって首相は暗殺されてしまう。 まず、一般視聴者が見た事件の始終、そして20年を経て残る疑問を短い「章」として冒頭に置き、その後に事件渦中の3日間を克明に語るというストーリィ構成がお見事。 迫真の展開に、もし自分がそんな目に遭ったらという恐怖感が加わり、興奮をいっそうかき立てられ続けるストーリィ。 1.事件のはじまり/2.事件の視聴者/3.事件から二十年後/4.事件/5.事件から三ヶ月後 |
※ 映画化 → 「ゴールデンスランバー」
●「モダンタイムス」● ★★ |
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2011年10月
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浮気を疑う妻が依頼した髭男から拷問されそうになる主人公、という書き出しから、一気に引き込まれます。 いったいどんな妻なんだ?という謎、恐怖から始まり、それが単純に引き伸ばされあるいは繰り返されることなく、局面が転回する毎に次々と新たな謎、恐怖が姿を現わすといったストーリィ展開。 これで面白くないなんてあろう筈がありません。「ゴールデンスランバー」に負けず劣らない面白さなのではないか。それに、舞台もまた同作品と共通するところがあるようです。 「人は知らないものにぶつかった時、まず何をするか? 検索するんだよ」 目まぐるしい程に次々と新たな局面が展開していくストーリィ、ワクワクする思いで頁をめくっていたのですが、その割りに最後はひどく抽象的な結末になってしまったところがちと残念。でもそれが本作品の主題なんだよなぁ。 ※なお、本作品には挿絵を完全収録した「特別版」もあります。 |
●「あるキング」● ★★☆ |
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2012年08月
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弱小プロ野球チーム・仙醍キングスを救うため、熱烈なキングスファンの両親の下に生まれた山田王求(おうく)。 天才的野球少年の0歳から23歳までを節目毎に描いた、スポーツ・ファンタジー物語。 ・・・というと夢物語的なスポーツ・ストーリィと思われるかもしれませんが(実際にそういうところはありますが)、本作品の真骨頂は、シェイクスピア「マクベス」との対比にあります。 「マクベス」といい、「ジュリアス・シーザー」の主要人物マーク・アントニーの引用といい、本作品はシェイクスピア作品との関わりが濃厚。 「マクベス」と比べてこそ堪能でき、「あるキング」という題名にも納得がいく、類稀なる物語。 |
●「SOSの猿」● ★☆ |
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2012年12月
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「私の話」と「猿の話」という2つのストーリィが交互に語られていきます。 前者の主人公は、家電販売店に勤める遠藤二郎。イタリアに滞在していた頃に友人の父親から悪魔祓いの方法を学んだことを見込まれ、昔馴染みの年上女性から引き篭りとなっている彼女の息子について相談を持ちかけられます。 後者の主人公は、システム会社の品質管理部に勤める五十嵐真。論理的にしか物事を考えられない人物で、因果関係をあくことなく掘り下げていく性格の持ち主。 さて、その2つのストーリィがどう関係するのか、表題の「SOSの猿」とは、一体何のことか? ・・・まるで判りません。 時間のズレ、現実と非現実、虚言か真実か、それらを軽々と飲み込み、混沌としたままストーリィを一気に進ませてしまう手練、理解できないなりに如何にも伊坂さんらしい作品、と感じます。 要はSOSを発している人の声、如何にして人はそれに応え、救いを得られるか、と言うべきストーリィ。 |
●「オー!ファーザー」● ★★ |
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2013年07月
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高校2年生の由紀夫には、何と父親が4人! 決して冗談事ではありません。現に由紀夫は、母親+自分+4人の父親=6人という家族構成の下で育ってきたのですから。 4人の父親、それは果たして幸運なのか不幸なのか。 本ストーリィにおいては、どうも幸運のようです。 他の作家なら単なるユーモア小説になってしまうところでしょうけど、伊坂さんが描くとそこには普通とは別の色合いある景色が生まれてくる、ただし日常生活とは紙一重、というところが伊坂作品の魅力。 4人の父親の他、由紀夫に纏わりつく同級生の女の子、面倒事に巻き込む幼馴染等々、愉快なキャラクターばかり。本書は、エンターテイメントとしても家族物語としても一級品です。 |
●「バイバイ、ブラックバード」● ★★ |
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2013年03月
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帯の「1話が50人だけのために書かれた“ゆうびん小説”が、いまあなたのもとに」という意味、判るでしょうか? 私は全く判りませんでした。 1話ずつ、応募者50人対し郵便で届ける小説。50x5話=250人なのだとか。それにプラス書き下ろしを加えて計6話から成る連作短篇集。 さらに本作品、太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」のオマージュ。 「グッド・バイ」(私は未読で知らないのですが)、妻と偽った絶世の美女を連れ、愛人たちに別れを告げる男の話とか。 各篇とも、ある意味、ワンパターンの展開。 何をどう描いても、伊坂さん、読者を楽しませてくれます。 |
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