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1.ジゼルの叫び 2.森をひらいて |
「ジゼルの叫び」 ★★ |
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バレリーナという世界に自分の存在価値全てを賭けた少女たちの孤独な姿を、連作形式で描いた長編。 共通の舞台は<金田バレエ教室>。 そこにはかつて佐波明穂という天才少女がおり、今は彼女の後を追うように、端島(はしま)澄乃という18歳の少女がプロのダンサーになるべく将来を嘱望されている。 「みどりの焔」の主人公は、その澄乃の双子の姉である彩乃。自分は逃げてしまったバレエの世界で高みを目指し続ける澄乃との距離の大きさを感じている。 「鋼の脚で」:家族は自堕落な母親と2人だけという林るり江。自分の存在価値を感じるためにバレエにしがみつく。 「かたちの記憶」:金田先生の息子である形郎、ふとしたことから林るり江と言葉を交わすようになります。るり江と会うたびに思い出すのは佐波明穂のこと。 「硝子のむこう」:澄乃と高校の同級生である新川朝香。スマホゲームに夢中の自分とまるで異なり、足先の変形にもかかわらずバレエに邁進している澄乃に、何故そこまでして?と感じる。 「泥と梨と」:澄乃、自殺した明穂の姿をいつも追いながらバレエに向かっている。その心のうちは・・・。 「幕間:みずうみへ」:父親に振り向いてもらうためバレエを続けた明穂でしたが、結局・・・・。 「神さまのつまさき」:金田バレエ教室の発表会。演目は“ジゼル”。主役ジゼルを演じるのは澄乃、そして精霊ウィリーたちの女王ミルタを演じるのがるり江。 澄乃に張合おうかというように踊ろうとするるり江、胸の内で明穂と対峙するかのように踊る澄乃の2人が醸し出す緊迫感、細部の描写はまさに圧巻です。 この場面にこそ、本作の真価があるように感じます。 1.みどりの焔/2.鋼の脚で/3.かたちの記憶/4.硝子のむこう/5.泥と梨と/幕間.みずうみへ/6.神さまのつまさき |
「森をひらいて」 ★☆ | |
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舞台設定は、というとかなり抽象的。 外の世界では戦争が繰り広げられているらしい。 そうした中、選ばれた観のある少女たちは、外の世界から隔絶された学園で寮生活を送っている。 寮生活を送る少女たちの間で流行しているのは、「森を作る」という遊び。どの少女も自部屋の中にイマジネーションの力を以て森を拵えている。 しかし、ただ一人、森を作ることができない少女・・・神林揺が本作の主人公。 何を訴えようとするストーリィなのか、捉えどころがない、というのが率直な感想。 しかし、終盤、やっとそれが分かります。 少女たちが外の世界から隔絶された中で成長するという状況、そこには男たちの勝手な目論見があった・・・。 少女たち、ひとりひとりがバラバラでは何もできませんが、お互いに手を取り合い、助け合えば、何か希望が開けるのかもしれない。そんな希望を感じさせるストーリィです。 とはいえ、釈然としない気持ちが残ります。 |