原田康子
作品のページ


1928年東京生、釧路市立高等女学校卒。東北海道新聞社の記者を経て作家。
「蝋涙」にて女流文学賞を受賞。21年10月死去。

 


 

●「満 月 



 
1984年11月
朝日新聞社刊

1988年3月
新潮文庫

 
2002/12/29

仲秋の満月の夜、愛犬セタを連れて散歩に出た高校教師・野平まりが遭遇したのは、侍のような格好をした奇妙な男。
その男は、津軽藩士・杉坂小弥太重則と名乗ります。津軽藩主からの命に従い、松前藩が支配する蝦夷地の実態を調べる為潜入していたのだという。
まりの祖母・貞子が杉坂を迎え入れたことから、まりはその杉坂と同居することになります。
タイム・スリップを題材に展開される、ファンタジーなラヴ・ストーリィ。
ちょうど映画ニューヨークの恋人で、過去のNYから現代にタイム・スリップした英国貴族と現代女性とのラヴ・ストーリィを見たばかり。つい比較してしまうのは当然でしょう。
ただ、本ストーリィは如何せん長い! 1年という限られた期間の中で、杉坂が現代に戸惑いつつ慣れていく様、当初杉坂に反感を抱いていたまりが次第に彼を恋するようになっていく様、四季の変化等が、丹念に語られていくからです。
こうした丹念さは、女性作家ならではのものでしょう。また、まりの祖母のしっかりした振る舞いが、本書の大きな魅力。
感動的な場面が特にある訳ではありませんが、まりと杉坂、祖母の3人の日常生活に知らず知らず惹き込まれてしまう一冊。

 


  

to Top Page     to 国内作家 Index