伴名 練
(はんな・れん)作品のページ


1988年生、高知県出身、京都大学文学部卒。2010年大学在学中に応募した「遠呪」にて第17回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞、同作を含む「少女禁区」にて作家デビュー。

  


       

「百年文通 Distance of One Hundred Years ★★   


百年文通

2025年09月
早川書房

(1500円+税)



2025/10/22



amazon.co.jp

15歳の中学生である小櫛一琉(いちる)は、古い日向屋敷の書斎で不思議な机に出会います。
何とその引き出しは 100年前に通じているらしい。
一琉は、大正7年に生きる14歳の少女=
日向静(しず)と、引き出しを介して文通を始めます。

初めは互いの時代にについて情報交換するだけでしたが、次第に物まで送り始めた一琉は、ある日放っておけない事実に気づきます。
一方、二人の時代を超えた文通に気づき、それを妨害しようとする人物も現れます。
一琉の側は
妹の美頼、そして静の側は姉の寿々という次第。

タイムトラベルものというと、歴史を変えてはいけない、変えられないという前提の下にストーリーが展開されていくのが一般的ですが、本作はその真逆を行きます。つまり、二人の少女は、歴史を変えても構わない、むしろ積極的に変えようとする?

いくら何でも歴史を大きく変えてしまってはまずいのでは?と思いますし、どんな影響が生じるのか懸念大なのですが、それは本ストーリーの終わった後のこと。
本作の面白さは、そうした前提をひっくり返している処と、大正時代の少女である日向静が、現代娘以上に好奇心旺盛で奔放、かつ行動力を備えた娘である処。この静の物言いが抜群に面白く、愉快このうえなし。
おかげで、面白く読めました。
 

※なお、本作は「コミック百合姫」に2021年、1年間に亘って連載された後、一迅社から電子書籍として配信。今回大幅に加筆改稿されて書籍化されたものとのこと。


百年文通/あとがき/巻末付録:時間SFガイド20(2010〜2025)

           


  

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