浜口倫太郎
作品のページ


1979年奈良県生。2011年「アゲイン」にて第5回ポプラ小説大賞特別賞を受賞し作家デビュー。また、放送作家としても活躍。


1.神様ドライブ

2.お父さんはユーチューバー

  


       

1.

「神様ドライブ ★★


神様ドライブ

2017年02月
講談社刊

(1500円+税)



2017/04/19



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主人公は大学4年生の藤原みのる。陰気で仏頂面のため就職活動はことごとくうまくいかず、就職活動断念+休学を決意。
そんな主人公の前に現れたのが、
冴木紡という人物。みのるの唯一人の友人である立木圭佑の父親が信頼しているコンサルタントで32歳。
その冴木紡、全国の神社を巡る旅に一緒にいかないかと、いきなりみのるに声をかけてきます。
実はみのる、神主だった父親の死にまつわる出来事から、それ以来ずっと神社に足を踏み入れることができずにいた。しかし、紡さんから背中を押されたみのるは、紡さんの神社を巡る旅に同行することになります。

ロードノベルの楽しさに加え、全国の神社案内という楽しさを備えた長編小説。
神社の案内人はみのるです。そこは神主の息子である所為か、神社に関する蘊蓄、各地の神社にまつわる伝説やご利益にめっぽう詳しく、為になるという以上にすこぶる面白い。
「それってだじゃれだよね」という紡さんの合いの手も絶妙。

なお、主人公のみのる、途中から旅の仲間に加わった
結城ほのか24歳にはそれぞれ抱えた問題があるのですが、旅に誘った紡さんの問題は中々明らかにされません。
それが明かされた時、この旅のそもそもの目的も明らかになるという構成。

何故神社を巡る旅なのかというと、神様とは人にとってどんな存在なのか、なぜ神様は人にとって必要なのか、と問いかけるストーリィになっているから、と言って良いでしょう。
ロードノベル、再生という題材に、“神様”という題材が加わったからこそ本作は魅力ある作品になっています。お薦め。

※私も神社は好きな方なので、名前を聞いたことのある神社、聞いたことのない神社、訪れたことのある神社と、名前を一緒に辿るだけでも十分楽しい。

        

2.

「お父さんはユーチューバー ★★☆




2020年07月
双葉社

(1400円+税
)

2022年07月
双葉文庫



2020/10/11



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海香(うみか)は宮古島の小学生、絵を描くのが好きで、夢は東京の美大への進学。
母親は海香を産んですぐ亡くなったと聞かされていて、家族は父親の
勇吾のみ・・・・でも、父親が営むゲストハウスにはイケメンの元気、坊主頭の一休が一緒に暮らしており、家族も同然。そしてもう一人、勇吾の幼馴染である虎太郎は、海香にとっておじさんのような存在。

宮古島で和気藹々、のんびりと暮らしていた海香たちでしたが、ユーチューバーは儲かると聞いた勇吾が、ユーチューバーにデビュー、アクセス件数増加狙いの為、いろいろ危ないこともやり出し、海香たちはハラハラ。そしてついに・・・・。

宮古島で暮らす仲間たち、ユーチューバー狂いした勇吾を絡めたコミカルなホームコメディといったストーリィだと思っていたのですが、終盤、思いもよらなかった事実が明らかにされます。
本ストーリィに、
「12年前 東京」〜「10年前 東京」当時の話が何故挿入されているのか、何故勇吾がユーチューバーで有名になろうと大騒ぎしたのか、その理由がはっきりします。

これはもう、どこまでも心温まる、純然たる家族ストーリィ。
出会い、再会の全てに勇吾が絡んでおり、アホとばかり思えていた勇吾の心の広さ、温かさが明らかになります。

勇吾、元気、一休、虎太郎も勿論ですが、笑い上戸の唯、そして健やかに育った海香の存在が何と言っても嬉しい。

都会で心が疲れてしまった人々にとって、宮古島の青さ、素朴さはどれ程心を休ませてくれるものだったことか。
海香、勇吾ら仲間たち、彼らの幸せがどうぞこれからも続きますようにと祈る気持ちです。 お薦め。

   


  

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