藤田宜永作品のページ


1950年福井県生、早稲田大学中退。73年渡仏、エール・フランス勤務を経て80年帰国。86年「野望のラビリンス」にて作家デビュー。94年「鋼鉄の騎士」にて第48回日本推理作家協会賞および第13回日本冒険小説大賞特別賞、95年「巴里からの遺言」にて第14回日本冒険小説協会最優秀短編賞、99年「求愛」にて第6回島清恋愛文学賞、2001年「愛の領分」にて 第125回直木賞を受賞。夫人は同じく作家の小池真理子氏。 


1.
女が殺意を抱くとき

2.
銀座千と一の物語

 


 

1.

●「女が殺意を抱くとき」● ★☆


女が殺意を抱くとき画像

2002年9月
徳間書店刊

(1700円+税)

2006年4月
徳間文庫化

  

2002/11/24

軽いタッチのショート・ミステリ32篇。気分転換には格好の一冊です。
様々な職業の女性が主人公として登場し、ふとしたことで殺人のトリックを見破ってしまうという趣向。
ただし、「女が殺意を抱く」という題名に興味を惹かれたのに、殺人を犯すのは必ずしも女性ではなく、むしろ探偵役が女性、という配役。その点はちょっと、違うよなぁ。(苦笑)
(雑誌連載時のタイトルは「とらば〜ゆ・サスペンス」だった由)

藤田さんは「いい意味での遊び感覚で書いた作品」と言っていますが、まさにその通り。読み手としても、快く楽しむことが出来る短篇集です。
また、解説での新保博久さんの「さまざまな女性の職業があることを知り、それぞれについて豆知識も得られるのだから、たいへんにお買い得ではある」という言葉も、その通り。
ただ、探偵役は素人女性ですから、時々推理を誤り、無実の人物を殺人犯として告発してしまうこともあります。そんなバランス良さも心憎い、本書の魅力を引き立てています。そんな中で特に印象に残った話は、「我が身を振り返れば・・・」

一遍に読まず、お茶を飲む時にでも少しずつ読む方が楽しめることでしょう。くれぐれも私の如く読み急がないように。

耳の中に響く声/心に引っかかったブレーキ/スイートルームの目撃者/不思議な女客/余計なおしゃべり/雨は名探偵/ビニール傘は歓喜の印/割れたレンズ/曇りのち快晴/美しい体・病んだ心/鋭い観察眼/人間の欲望/“珍事”が崩したアリバイ/孤独な女友達/先入観念/天国にもっとも近い場所/我が身を振り返れば…/業界用語にご用心/二件の婚約/若者の常識/雪の降る街/東京駅のことならば/自転車操業/ニュース報道/開かずの窓/ホッチキス事件/過剰防衛/暗い生け垣/料理上手な男/偶然の出会い/萎れたバラ/雪がもたらした予感

    

2.
「銀座 千と一の物語 ★☆


銀座千と一の物語

2014年03月
文芸春秋刊

(1900円+税)

  

2014/03/25

  

amazon.co.jp

銀座百店会が発行している月刊誌「銀座百点」に連載された、ショートストーリィ33篇を収録した一冊。
最近は縁遠くなってしまいましたが、以前は銀座で買い物をしたりして、よく「銀座百点」を貰っていました。まさに「銀座のかおり」を届けてくれる雑誌で、有名人の寄稿も多く、結構喜んでもらっていた記憶があります。
ちなみに「銀座百点」の創刊は1955年、私の生まれた年です。それ以来ずっと継続刊行されているのですから、何て凄い!

収録ストーリィは勿論、銀座の街が舞台。
その銀座で、旧い知人との再会、時には新しい出会いも描かれます。人と人がふと出会う街、そんな街はとても嬉しい。
各篇の登場人物は年配者が多い。その所為か、どの篇にも落ち着いた雰囲気があります。
そんな年配者であっても、ふとした出会いに心を躍らせる、というロマンはあります。若者の様な熱烈なものではありませんが、懐の深さが感じられます。そして出会い、ロマンを楽しむという余裕が男女の双方に感じられて、楽しいことしきり。
そんなストーリィに、銀座という街は文句なく相応しい。チェーン店等の入れ替わりはあっても、東京の他の繁華街に較べて大人っぽく、時代を超えたいつも風情が漂っているからでしょう。
高層建物がなく、建物の高さがだいたい揃っていて、空が開けて見えるところも好い。そして裏通りに入れば路地があったりと、庶民的な姿も垣間見せるのですから、銀座という街の魅力は尽きません。

私にとっても銀座は、親しみのある街です。大学3年からずっと通学、通勤先の殆どが銀座沿線で、何かと言えば銀座に出ていましたから。
銀座を散策する楽しさと、洒落た出会いを味わえるショートストーリィ集。銀座という街が好きな方に是非!


時計だけが知っている/長い旅/探しもの/ステキなタイミング/路地の女/名刺は語る/嵐を呼ぶ男/スロット/未来へ続く/ママチャリの看板娘/家出少年の運命/ライバル心ふたたび/帽子の女/車夫にときめく/高嶺の花/心の軌跡/大嘘つきの秘話/小さな求婚/コーリング ユー/愛の神の棲むサロン/メモリアル・ビル/夜のサクランボ/人助け/おめでとう/文明の利器/銀ブラ一番族/遮断機/ナルニア国の熊さん/俺の国会議事堂/座禅シニア/伴走者/待ちぶせ/ギンザ・ギンザ・ギンザ

  


  

to Top Page     to 国内作家 Index