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21.僕たちは我慢している |
【作家歴】、いつまでも白い羽根、海路、トライアウト、ホイッスル、手のひらの音符、波風、闇から届く命、晴れたらいいね、おしょりん、テミスの休息 |
満天のゴール、この世界で君に逢いたい、海とジイ、跳べ暁!、きのうのオレンジ、メイド・イン京都、金の角持つ子どもたち、空にピース、リラの花咲くけものみち、森にあかりが灯るとき |
「僕たちは我慢している」 ★★ | |
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「金の角持つ子どもたち」にて中学受験に挑む子どもたちの姿を描いた藤岡さん、今回作は大学受験に挑む高校生たちの葛藤、覚悟を描いた連作長編。 主人公は、千原道人、穂高英信、中森揮一、香坂淳平という野球部仲間だったり、同級生だったりという4人。 かれらの高二〜高三という大学受験に向かう時期を、それぞれを主人公にした4章構成からなるストーリー。 大学受験と一口に言っても彼らの場合、自分の成績、自分の希望に沿って志望校を選べばいい、という単純なことにはなりません。 家庭の経済状況という問題もあれば、事業を継いでもらいたいという親の期待、ずっと取り組んできた部活動、といった様々な要素がその背後にあることを否めません。 そのうえで、彼らがどう決断し、どう覚悟を決めるか、という処が読み処。もちろんその後に、受験勉強と合否見込みといった問題もあるのですが。 ただ、彼らが通っている高校は、毎年国立十大学へ学年の6割以上が進学するという、中高一貫の名門私立校。そしてその親も、医師だったり弁護士だったり、それなりの事業経営者だったりと、普通の一般家庭ではありません。 ある意味、特権階級だからこその話、問題とも言えますが、だからこそ彼らの抱える悩みも深いと言えます。 受験に際しての迷い、悩みという部分だけを取り出せば、そこはやはり受験生の共通項と思います。 各主人公たちが、悩んだ末に自分自身で決断する、という顛末が気持ち良い。またその過程で、互いに支え合う、励まし合うという部分も見逃せません。 受験をテーマにした、高校生たちの青春群像劇。爽快です。 1.僕たちは春に揺れる−高校一年 四月/2.僕たちは秋に憂う−高校二年 十一月/3.僕たちは夏に挑む−高校三年 八月/最終章.僕たちは冬に懸ける |
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