遠藤瓔子
(ようこ)作品のページ


1939年兵庫県神戸市生、京都育ち。同志社大学文学部英文科を中退後
日本航空入社し、スチュワーデスとして国際線に搭乗。68年作家の安部譲二氏と2度目の結婚、2児をもうける。離婚後広告代理店勤務を経てエッセイスト、音楽プロデューサーとして幅広く活躍。著述業の傍ら、京都に着物の店「きものであそぼ・あそびば」を営む。

 


   

●「京都の叔母様宅」● 




2008年03月
KKベストセラーズ刊

(1550円+税)

 

2008/04/22

 

amazon.co.jp

一応小説の形をとっていますが、本質は京都暮らしの案内。
京都の町家で暮らす井上淑子62歳、麗子37歳の母子、東京の渡辺彩花24歳を主要な登場人物として、京都人の暮らしぶりが紹介されていきます。

第一章は、京都に惹かれつつ実際の暮らしに不便さはないのか京都人の本音を知りたいという思うようになった彩花が、父親の恩師であったという伝手で井上家に3泊4日の予定で訪れる、という設定。
ちょうど桜の時期。観光客には知られていない、桜の見所、京暮らしならではの食べ物の楽しみを、母子2人で彩花を案内するという形で進められていきます。
他からみて日本的な風情あっても実際住むとなると不便なところは大きい。それにも関わらず「町家
暮らしを続けているのは、他にしようもないから、それこそ“痩せ我慢の美学”と淑子は彩花に説明するのですが、言い得て妙。
(※商売をしている場合は「町屋」と言うらしい)

第二章は、夏の頃。初めて恋を知った麗子と、それらしいと感づいた淑子が娘のみを案じるという展開を軸にした、京都の夏の風情を案内。
盆地気候、鰻の寝床のような町屋住宅。当然うだるような暑さを我慢する訳ですが、それは相応の京都人ならではの工夫がある、というのが見せ所。
合わせて、隣の和菓子屋に横浜の港北ニュータウンに住んでいた長男一家が同居することになったという設定をモデルに、外の地(特に東京)からやって来た人間にとって京都人と暮らし難さが描かれます。

※なお、本文下に京都の豆情報がマメに付されているのが有り難い。挿入された絵や写真で京都の具体的な様子も判り易い。

1.彩花/2.淑子と麗子

     


   

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